巷で話題の新テストのプレテストが行われました。
平成30年度試行調査 問題、正解等_1110|大学入試センター
去年の一回目の試行調査からはまた少し変化したところもあり、思うところもあるので忘れないうちにメモしておこう。
先に断っておくが、あまりテストの是非については興味がない(というか、対応するしかない)ので、その点については議論しない。あくまで、日常の授業や生徒への指導との関係で興味があることを記すに留める。
前提条件として
問題を見ていく前提条件は揃えておいた方がよいでしょう。
「大学入学共通テスト」における問題作成の方向性等と本年11月に実施する試行調査(プレテスト)の趣旨について
色々と書いてありますが、国語科としてのキーワードを拾っておくと、以下のような観点は気をつけて良いかと思われます。(下線強調は引用者)
- 国語における言語活動を意識した問題(P.2)
- 共通テストでは、高校教育を通じて、大学教育の基礎力となる知識及び技能や思考力、判断力、表現力がどの程度身に付いたかを問うことをねらいとしています(P.2)
- 高等学校学習指導要領において育成を目指す資質・能力に準拠し、知識の理解の質を問う問題や、思考力、判断力、表現力を発揮して解くことが求められる問題を重視します。(P.3)
- 作問のねらいとして問いたい力が、高校教育の指導のねらいとする力や大学教育の入口段階で共通に求められる力を踏まえたものとなるよう、各教科・科目において問いたい思考力、判断力、表現力を明確に整理した上で問題を作成する(P.3)
この整理とは、以下の表のことである。
(作問のねらいとする主な「思考力・判断力・表現力」についてのイメージ(素案)より)
この表についてはまた後ほど。
- 高校等における「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善のメッセージ性も考慮(P.3)
- 授業において生徒が学習する場面や、社会生活や日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面、資料やデータ等をもとに考察する場面など、学習の過程を意識した問題の場面設定を重視(P.3)
- 言語を手掛かりとしながら、与えられた情報を多面的・多角的な視点から解釈したり、目的や場面等に応じて文章を書いたりすることなどが求められます(P.7)
- テキストの内容や構造を把握し、解釈することや、その上で要旨を端的にまとめ、わかりやすく記述することを求める(P.7)
と、だいたいこんな感じである。
一目瞭然で分かると思うが、新学習指導要領の意図をかなり汲んだ方向性である。その結果、出題される資料の数はかなり増えていると言えますし、選択肢の問題にもすっかりおなじみになった話し合いの場面が現れているとも言えます。
方針に対する雑感
「高校等における「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善のメッセージ性も考慮」(P.3)というのも、当たり前っちゃ当たり前ですが、まあ、このテストの形式で適切にメッセージとなるかは判断しかねる。全国学力学習状況調査だと実施結果を踏まえて改善のアイデアも出されるけど、このテストはそんなことはしないだろうし……。
「学習の過程を意識」というのは、なかなか大切だと思うのだが、どうだろう。テストで測るということの是非はあるにせよ、「学習の過程を意識」ということは、高校の授業者には結構大きなメッセージになっていると思う。
一方通行で言語活動の伴わない授業であれば、別に「学習の過程を意識」する必要がないからだ。言語活動なりALなりを授業で行い、質を保障するのであれば「学習の過程を意識」することはかなり重要な観点である。
要するに、授業の方法論を変えることを求めている以上、その際に必要な観点をメッセージとして示しているとも言える。「活動あって学びなし」の批判や活動か教え込みかの議論に逆戻りしないためにも、現段階から少しずつ参考にできるものが増えるに越したことはないでしょう。
「思考力・判断力・表現力」の表について
先ほど挙げた「作問のねらいとする主な「思考力・判断力・表現力」についてのイメージ(素案)」だけど、これは授業を組み立てる立場から見れば、割と面白い試みというか活動を授業に効果的に組み入れたり明確な目標をもって授業を行ったりするための参考になる整理の仕方のように思う。
もちろん、この表がそのままよいとは言わない。テクストテクストと小うるさい印象を受けるし、一つ一つの要素と配置している個所が本当に適切な構造になっているのか怪しそうなものもあるし、逆に抽象的過ぎてなんでもありに見えるところもある。
ブルームタキソノミーではないが、授業を考える際に、どのような活動がどのような目標と対応し、どのような構造になっているのかということを、もう少し整理して自覚的に扱えたほうがよいよなぁという問題意識は個人的には持っているので、こういう試みはやはり興味がある。
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この辺りの研究でやっていることをちゃんと現場に落とし込めないものだろうか。ちょっと試してみたいところである。
もう少し、欲張りなことをいうのであれば、ここに小学校・中学校からの系統性という観点も授業者は持たなければいけないだろうと思う。高校の教員で小学校・中学校からの流れを意識している教員は多くないように感じる(自分の周りでは皆無である)。
現行の学習指導要領から巻末の付録に「系統表」が掲載されるようになっているが、どれだけ意識しているだろうか。新学習指導要領では一層「系統性」は強調されることであり、重要な観点である。
結局、授業者がどのような「目標」や「ゴール」を見定めて、指導の在り方や評価の在り方を考えるかということを、提示された問題例と比較しながら考えていくことが重要というありきたりな思いを抱いている。
問題についての感想
ここからは国語の問題についての感想を書いていこう。30分くらいで解いた感想なので、それほど真面目に吟味はしていないことを断っておく。
とりあえず、前提として問題のねらい、主に問いたい資質・能力及び小問の概要等(案)は読んでください。
全体の印象
前回に比べて資料の数というか扱わなければいけない情報量はほぼ同じくらいだが、問題の選択肢の長さが短くなったことや難易度が下がったことでボリューム感は減った気はする。
作文は「実用国語」だと思っていた世間の流れに冷や水をぶっかけた形である。個人的には勝手に勘違いしたのは世の中の方なので文句をいうのは筋違いに思うが……。「書くこと」の内容であれば、今後も様々なバリエーションがあり得るだろうし、この設問自体が言語活動例としての役割もなりうる。
選択肢は現行のセンター試験よりはるかに短い。その分だけ、解きやすいとは思うが、処理する情報が増えているので時間はそう簡単には減らないか。どうなのでしょう、消去法やら間違い探しやらをさせるような問題の作りと、読ませる情報が多くて手間取るが読めれば解ける問題と、どちらのほうが適切なのか……分かりかねる。
個人的には複数の資料を行ったり来たりという体力は高校を卒業する段階でつけて欲しいと思うので、こういう形式の出題もやむなしとは思うものの、今の出題で適切に資料を組み合わせて情報を生産できるような能力を試しているとは思わないし、面倒なだけになっているような気もしている。
大問1(記述問題)
さて、世間を騒がせている記述問題である。今回は実用的な文章ではなく、評論的な文章からの出題。文章は都合3つ出題されているが、長さについてもよいバランスだなぁと思う。
問1…30字記述
傍線部を適切に言い換えて説明する問題。国公立の記述のような構造的なものではなく、一部私立大学、とくに女子大で求めらるような記述の形である。
模範解答を見ると結構、質的にばらつきがあるものが並んでいるけど……いいのかな。
この手のもやもやした解答の傾向は進研模試によく似ているように感じる。ベネッセの進研模試によく似ているのである。大切なことなので二回言いました。
問2…40字記述
生徒の「ノート」を問題にしてみたというのは、どちらかというと教員へのメッセージの方が強い気がする。実際の生徒のノートがこんな感じにはなるまい(笑)。
割と重要なメッセージとして、「板書を写すだけではなく生徒自身が学習の中でノートに情報をまとめられるようにすること」だとか、「複数の文章を構造化して整理する指導」だとかをちゃんと授業に取り入れてくれよーというようなものを感じる。
設問自体は割と情けない。空欄直前の「しかも」を文章Ⅱから探せば解けてしまう。そのため、まったくノートという設定や複数の情報という設定は解答には生きていない。
「よいノートのまとめかた」を試験で測定するのも気持ち悪いので、まあ、ノートを素材にしたのは、教員に対して「ノート指導」を考えろというメッセージの方が強いように思えるのです。
問3…120字記述
これまで読んできたことを新しい文脈に当てはめて考えるための作問。思考の過程を重視するという看板通り、学習が進んでいく様子をモデル化して示そうとしたのは意欲的な試みだと思う。
ただ、やはり設問は苦しい。条件が4つもあるので、記述はギチギチに方向性が縛られているし、解答自体に複数の資料を組み合わせるということの比重は高くない。むしろ、思考停止して本文から切り貼りしたほうがよさそうである。この手の気持ち悪さは都立中高一貫の適性検査の作文に通ずるところがある。
授業で取り組んでもらいたいこと、できるようになってほしいことの姿と、設問がかみ合わないのである。
背景まで含めて考えると、素材は面白いんだがなぁ。人間の言語、特に「指示」に関わることを読ませてきて、人工知能についての文章でしょう?人工知能と言語の関わりって文系理系のどちらの生徒にとっても、「もっと調べてみたい」と思える素材だからなぁ。素材の選び方にちょっと本気を見た気がする。自分が授業するときにもこういう感じで上手くかみ合ってくれると上手く行くのも分かるが……とても素材探しは大変である。
第2問…実用的な文章&論説
今回は実用的な文章として法律の文章が出た。
ただ、ステーキのポテトやニンジンくらいの役割なのでそれほど珍奇なものでもない。
ポスターの穴埋め問題も非常に平易である。
論説の中に表が複数出てきて、それを比較させて考えさせるという点が新しいと言えるし、ちょっと面白い。
問1…漢字
特にいうことなし。現行と同じ。
問2…資料を比較して同一のものを答える
資料2と文章を比べて同一の内容のものを見抜くという問題。問い方が嫌らしいが、何を問われていれば分かれば答えられるので平易と言えるが、この手の「把握」がかなり生徒は苦手である。
何で苦手なのかイマイチ実感がないのだが、平易な問題で弱点を突いてくるあたりが嫌らしいし、試験としては上手いと思う。
問3…普通の読解
特記事項なし。普通の読解である。資料を理解しているとおそらく理解は早いと思うが、そこまで確かめなくても解けるだろうな。
問4…情報の再構成を試す
本文では同じ内容を異なる観点で構成した二種類の表が登場してくる。どのような構成の違いがあり、それによってどのような効果があるかを説明させるような問題である。
「情報」ということを正面から扱った問いであり、入試問題でも授業実践でも見たことがない着想の問いである。
これは結構、授業としても盲点だったな。リテラシーとしても大切な観点になるだろうし色々と別の素材を考えられそうで面白い。
問5…表現についての問い
これも現行のセンターと違いはない。面倒くさいだけ。
問6…情報の活用
自分が読み取った資料について、ポスターにまとめるという活動が想定されている。
読むべき資料を自分で判断できる力があるならば、問題としては非常に平易。どの場合にどの資料を選ぶのかということを考えられないと途端に時間を食う問題になる。
資料を選ぶということを指導することの必要性を考えさせられるのである。
もしかして、第2問を実は記述問題として作っていたんじゃないか、これ。そんなことないか。さすがに穿ちすぎ。
第3問…文学的文章
たぶん、「詩」が出されることや「随筆」が出されることは想定していなかった人が多いだろうと思われる。本番に「詩」や「随筆」が出されるかは分からないが、まあ……現状、高校の授業でおざなりにされやすいことを思うと、脅しなのか。
しかし、内容がかなり生徒には難しいのではないかと思われる。どちらも生徒が苦手意識を持ちやすいタイプの文体である。こういうまさに「詩的」で「随想的」なものは生徒が苦手とするところであり、面倒くさがるところである。理解しようとしないで、硬直する。
割と深刻な問題に思うのだけど「文学国語」の問題もあって、これ、どうなるんだろう?
問1…語句の解釈
これも現行通り。特記事項なし。
問2…詩の内容についてのエッセイの中での解釈を答える
これはかなり生徒が苦手である。自分の解釈なのか説明されていることなのか、何を自分が答えているか分からなくなってしまうのである。
この問題をちゃんと解くためには、ある程度、傍線部についての自分の考えであたりをつけたうえで、エッセイの方を丁寧に読まないとダメというタイプである。
短い選択肢であるが、表現が詩的・抽象的で生徒にはかなり読みにくいはず。こういう語句の吟味や解釈の吟味という作業は、著しく生徒に不足しがちである。
問3…本文の読解だが…
これも選択肢が短く、平易に見えるが、論理的な文章とは違って、すっきりとは解けない。自分である程度妥当な解釈の方向性を見抜けないと、似たような選択肢に逡巡する生徒の様子が思い浮かぶ。分かってしまえば平易なんだが……。
問4…また解釈。短いのだけど……
これまた本文の解釈で、選択肢はとても短い。
しかし、解釈をするには詩の文脈とエッセイの文脈の両方を注意深く見ないといけないので、苦手な生徒にはトコトン厳しい。
問5…またまた解釈…
これもまた判然と書いていないものを解釈して答えさせるものである。ここまで三問連続でこの手の問いである。詩が苦手な生徒は泣き出すんじゃないか、これは。
ある意味、詩が「読めてしまう」生徒には即答できそうなのが、問3、問4、問5である。エッセイで答え合わせをしなくても、直感的に解けてしまう。選択肢の質が割と大きく違うので、詩を読めてしまうとエッセイに戻らなくても選択肢から当たりが付く。エッセイがあることで誰にでも妥当な解答に絞ることができるようになっているし、素材は面白いのだが、詩だけでも解けてしまいそうな作りはややバランスが悪いか。
思えば、センター試験で小林秀雄が出たときに、受験生は壊滅したけど、あれと同じような雰囲気を感じる。まったく違うジャンルの文章なのだが、受験生の食わず嫌いや不慣れさが突かれているように見える。
問6…表現の問題
(1)の方で新しい試みをしているように見えるが、ちょっと苦しいところ。(2)の方は現行と同じ。面倒なだけ。
第4問 古文(源氏物語「手習」)
なぜ、源氏を出すんだ(笑)。この前も源氏だったでしょう?
まあ、おそらく有名な素材でも色々な工夫の余地があるのだということを示そうという姿勢なのだと思う。
問1…なぜ解釈から?
不思議なのが設問の順序。現行のセンター試験は問1で語句の意味を聞いているのだが、なぜかそれが問2になって、いきなり解釈から聞いている。内容自体は別に従来型に変化なし。
問2…なぜここで語句?
そして語句解釈が消えたかと思えば、消えていないのである。消えたのは文法の問題である。そのあたりにちょっとした意図は感じるが、しかし、なぜ問2になった…?
問3…登場人物の読み取り
登場人物の人物像についての読み取り。従来型に近いが、細かい正誤を問うというよりも、全体をざっくりと捉えられているかという方向に見える。これ以上細かく設定を問われるようになると途端に回答がきつくなる。
問4…傍線の解釈…?
ちょっと設問として中途半端。内容の選択肢と表現の効果の選択肢が入り乱れるのは据わりが悪い。もう少し、狙いを絞った出題は出来るのではないか。
問5…別の文章を用いて「引き歌」の理解
生徒と先生の会話、生徒同士の話し合いという言語活動を想定した形の出題。正直、こんなに物分かりのよい生徒はいねぇよ!と思うし、このタイプの出題がまともに話し合いの能力に関係する力を測定できているかは同意しかねる。
こんな面倒くさい形式にしないで、従来型の形式でも「引き歌」は出題できる(されてきた)ので、これはダメじゃないかなと思う。
ただ、引き歌を素材にしたのは面白いとは思う。古文の読解で生徒は引き歌は苦手である。というか、よく分からないものだと思っている。だから、どちらかと言えば、共通試験としてはあれだけど、参考書として生徒に引き歌を教えるには分かりやすくできている(笑)。
ただ、試験として本質的にまずいのは以下の問いだろう。
引き歌に基づいた本文の解釈が問われている問題なのだが、選択肢がマズイ。
①と②の選択肢で歌の正しい解釈を理解しているか試されている。ここまではよい。
問題はその先で、設問の設定が「話し合い」ということになっているので、後半の選択肢が、①と②に縛られているのである。
つまり、③と④は①の解釈を前提とした内容であり、⑤と⑥は②を前提とした内容である。
だから、そもそも①と②を判別した段階で、残りも二択なのであるし、そうでなければちゃんと読めていないことに他ならないのではないか。
正解は②と⑥なのだが、②を選べなかった時点で、あとの答えは誤りなのではないか?そもそも苦し紛れに①と②と書いても7点もらえてしまうのだし。
話合い形式で出題する限界を露呈したように思う。
第4問 漢文(朝三暮四)
漢文であるがこれも比較的有名な話から持ってきたなぁという印象。
あと、設問が一番従来型に近い気もするし、どうも練り込みが現代文ほど感じられないのは自分だけだろうか。
問1…漢字の解釈
従来型と同じ。特記事項なし。
問2…返り点・書き下し文
これも従来型と同じ。特記事項なし。
問3…書き下し分・解釈
これも従来型と同じ。特記事項なし。
問4…漢文の解釈
従来型と同じ。特記事項なし。朝三暮四知っていると解きやすい?
……ね?漢文の設問のやる気のなさ……。
平易にしないと解けないという現実に迎合したのかどうか。
問5…複数の文章を組み合わせての解答
少しだけ新テスト色が出ているのがこの設問だが、話し合いの台本の量が古典に比べてお話にならないほど少ない。時間調整に漢文が使われていないか、これは。
(1)については朝三暮四の意味をそのまま聞いているだけの質問。これはあまりに酷くないか。小学生であっても解けるんじゃないか?でも、ここで問うということは、もしかすると「高校生は故事成語が出来ない」というデータがあるのかもしれない……が、いいのか、これで。
(2)本文で該当箇所が見つかるかという問題。別に話し合いである必要がない。
(3)これも本文で該当箇所が見つかるかという問いに過ぎない。
問5だけ新傾向に見せても、やらせていることの質がかなり低い。
漢文の作問はどうなっているんだ、これ?前回との落差が相当に酷い。
全体のまとめ
難易度を穏当なものにしたなぁ…という印象が強い。去年のがかなり無理をさせた問いなので、まあ……さじ加減を探っているような印象が強い。
ならば、2020年にこだわらないでもう少し丁寧に試行調査すればいいと思うのだが……。
問題の出来は自分の興味から外れるので脇に置くけど、こうして色々な素材の扱い方や授業の観点が提示されること自体は面白いのではないかと思う。「資質・能力」だとか「見方・考え方」というが、実際の授業にするときのイメージが持ちにくいのも事実である。
今まで色々な人がとりあえずの案を示して、発表してきている印象はあるが、その細々としたものよりも、さすがにこういうテストで出るとインパクトは強い。
いろんな批判に配慮したんだろうな……という苦労が見えるのが心情的には同情する。
難しいのが、あくまでこのテストは現行の学習指導要領に基づいて作られたという建前になっている以上、新学習指導要領が施行になってからは、また問題の質が変わるのかということである。
断絶はないだろうし、実際は共通テストを見て、授業が工夫されることになるのだとも思う。
その際に一番大きく気になるのが「文学国語」の扱いである。今回のレベルで問題が出題されるなら、間違いなく高校1年で少し文学的文章に触れた程度では太刀打ちできない。
4単位科目のために、選択の融通がほとんど効かない。
単位数を減らして……ということが、簡単に認められる気がしないしだからと言って国語をで12単位も授業できないだろうし……抜け道として補習などでやるとか?
何にしても無茶が露呈してきた感じがある。
しかし、繰り返すが授業の素材や授業の組み立ての観点としては面白いものは多い。授業改善に向けて、色々な工夫のヒントをもらえたことは嬉しく思う。
結局、授業をする立場の人間は、生徒をよく見取り、適切な目標や指導の方法を選び、適切に評価し、成長に導いていくということを繰り返すしかない。その目標や生徒の見取りにおいて、「資質・能力」にこだわってよいのではないか、「資質・能力」が抽象的ならば、「授業で何ができるようになればいいのか。何を保障するのか」ということに明確な意思を持つことが求められ、そしてそれをきちんと説明できる評価の方法を持つことが重要なのだろうと思う。
ただ、それはあくまで「授業」として、生徒と向き合っているから重要だと思うのであって、センター試験もとい共通テストのように条件の違う莫大な数の生徒を同時に峻別するテストで、そういう能力を測っていいのか、測ることができるのかは別問題である。
いずれにしても、入試には振り回されるのである。振り回されるけど、入試のための授業ではなく、生徒を正しく見取った上で、授業する人間が主体的に何をするかを決めていけるようなことが大切だろうなぁと思う。