冬休みで読書が捗ります。
楽しみにしていた本が読み終わりました。
丁寧に自分たちの学校の在り方を模索していく姿が印象的な本でした。
生徒が決めることの意味
この本は理論書だとかノウハウ本だとか、そういう類の本ではない。明日の授業にすぐに役立てようとするために読む本としては相応しくない。
この本で書かれていることは、生徒たちの学びの足跡と、それを見守り支えようとする教員の思いである。
何かを成し遂げた完成形としての実践報告ではなく、これまでの取り組みとこれから何をしたいかということを赤裸々に綴ってある本である。
象徴的なのが、この本の前半である。子どもたちの視点から、プロジェクトに取り組むということで、どんなことが起こったのかということが丁寧に記述されている。
文字通りの「学年全員で」取り組む「学年プロジェクト」について、色々な立場の子どもたちがそれぞれに様々な思いを抱え、葛藤し、成長する、その瞬間を物語として描き出している。
自分のこととしてプロジェクトに取り組むことの意味を見出していく、その過程が手に取るように分かる。
生徒はたしかに附属の学校なので優秀なのかもしれない。しかし、元々の優秀の問題ではなく、時間と裁量が与えられることで、静かに成長していっているのである。その牛歩の成長をきちんと見取り、支援する教員の眼差しがまた優しいと感じるのである。
教員も手探りで進む
義務教育学校という「新しい」形態の学校を一から作り出す方は、それが附属の学校とは言え、簡単な話ではない。
もともとの小学校、中学校が普通の学校を統合するよりはやりやすある条件が揃っているとは言え、次の年から自然と移行できるものではない。
だから、本書でも非常に丁寧に「学校としてどのような子どもを育てたいのか」ということや「どうすれば9年間の見通しのあるカリキュラムを作れるか」ということや「どういう意識で子どもたちに関われば良いか」ということなど、かなり悪戦苦闘して、現在進行形で模索している姿が述べられている。
その議論の中で大切にされているのが、トップダウンの指示としての学校づくりではなく、生徒や地域までも含んで、少しずつ模索しながら「こうしたい」という思いを大切にしようとする在り方である。
学校の在り方を教員が独占するのではなく、まさに学校に関わる人々を当事者として惹きつけながら、学校を作っていく。そういう在り方が描かれているのである。
この本を読んで思い出したのが、以下の本である。
もう20年近く経とうとしていますが、この学校も当時としては間違いなく先進的だった。
その学校づくりにおいて、当事者が当事者として関わる姿の活き活きとしていることに、エネルギーを感じた記憶がある。
新しく学校を作る、何かを新しく始める。
そういう時に、当事者になろうとする人たちは、大変なのだろうけど、こうした強烈なエネルギーを持つことができるのだなぁ……。
ノウハウではなく読みたい
この本は実践報告でもノウハウの伝授の本でもない。
生きた活動記録として、一つの学校が創られていく物語として読むと面白く読めるのである。
そういう物語を読んで、少しでも元気になりたい人に、ぜひ読んでもらいたい一冊だ。