先日、都留文科大学の野中潤先生に教わって、オンラインでQFTをやる方法を体験してみた。
野中先生の教えに従って、TTPS(徹底的にパクってシェア)である。
共同編集を活用して…
まだ、密集しての話合いというのが避けられる状況であるので、教室で場を共有しているものの、机をひしめいての質問づくりは自重である。
その代わりに、活用するのが「Googleスプレッドシート」の共同編集機能である。
生徒の端末で一つのスプレッドシートにアクセスしてもらい、班ごとにそれぞれのシートに分かれて作業をしてもらうという流れだ。
スプレッドシートは以下のようなイメージで準備する。
本来、質問づくりは話し合いながら、質問を手書きで書き留めていくというプロセスを取るのだが、共同編集で同じ画面を見ながら順番に記録していく。
基本的な流れとしては以下の通り。
- 密にならないようにしながら、顔が見える円卓の形で集まる。
- 「質問の焦点」に関連した質問を述べていく。
- 質問の書き取り方は発表者が打ち込むか、代表者が打ち込むかは自由
- 一通り質問を出し尽くしたら、質問を「閉じた質問」と「開いた質問」に分類する。質問の分類はプルダウンリストから選べるようにしておく。
- 作った質問からいくつか選び、「閉じた質問」と「開いた質問」を逆に書き換える。
- 作った質問の一覧から、自分にとって大切な問いを選ぶ。
まあ、普通のQFTですな。
使ってみての感想など
デジタルを使うメリット
デジタルでQFTをやってみると、アナログとは違う展開を見せているなぁという印象です。
メリットとしては以下の通り。
- 閲覧性・一覧性が非常に高い。後からの見直しがしやすい。
- 閉じた質問と開いた質問も分類の効率がよい。
- 書き換え作業の効率が早い。
- 他の班の作業の様子をのぞきに行くことが出来るので、質問の出る量が増え、活発に交流が起こる
- 発言のハードルが下がる。プレッシャーが口頭よりも弱い。
- 散逸しない
見やすい・無くならない・加工しやすい・量が増える……と、まさにデジタルを使うことで手に入れることができるあらゆるメリットが得られる感じだ。
デジタルを使うデメリット
逆に、デジタルを使うデメリット……というよりは、戸惑ったことも挙げておこう。
- 「発言の尊重」という観点が少し弱い気がする
これは感覚的な問題。QFTの大切な点として「自分の発言が平等に尊重される」という感覚を参加者が持てることがあるが、それがどうも弱い感じがする。自分の発言を丁寧にノートに書き取ってもらえる……という視覚的な情報が、発言者を元気づけている部分もあるなぁと感じるので、どうもPC画面にみんなが向きっきりになってしまうのは、そういう面が弱い気がする。
これが逆に完全にオンラインだと、パソコンの画面を見つめていることになるから、逆に「とてもよく考えてくれている」というように見えるので不思議だ。
- ターン制の発言になりやすい
これは縛ったわけではないのだが、共通の画面に打ち込む都合上、どうも発言の仕方がターン制になりやすい。紙に書きとるような方法だと発言を受けて「じゃあ、こういうのも…」というのが起こりやすいのだが、どうもデジタルで打ち込んでいると、双発的な感じになっていかない気がする。慣れかな?
- 意外と打ち込みが大変
質問づくりはアイデアをどんどん出すのがミソなのだが、手書きに比べるとスプレッドシートへの打ち込みは速度が落ちやすい。これはタイピングの慣れの問題もあるが…。
- スマホのスプレッドシートアプリがとにかく使いにくい
画面が小さい、動作にラグがある、勝手に変換を確定して入力を終了してしまう…などのイライラする挙動を見せるアプリ…iPhoneで使うと扱いにくいことこの上ないし、Androidは重くて動かないし……laptopが最強である。
成果が問われるのはこれから
まあ、今日は質問づくりまでである。質問づくりの真価が問われるのは、実際に質問を使って作業をし始めてからである。
手書きであると、どこに書いたのかということがわかりにくくなって、あとから結局見直さないみたいなことが起こりやすいが、こうやってデータで収集しておくと、どんどんこの元のデータを加工して自分の学びに自由に活かすことが出来るはずだ。むしろ、そういう活用をどんどん促すのが、自分の授業者としての仕事であると言えよう。
また、普通の質問づくりだと、他の班の作った質問全部を共有することはかなり難しいのだが、今回はデータで集めているので、あとから他の班の作った質問を自分のものとして取り入れることも可能である。
生徒がまだまだタイピングが上手くなかったり、アプリの扱いに慣れていないので、普段よりもかなり戸惑うことになったが、それでもこうやってデータとして集めてみると、手書きでは出来ないことが出来て楽しい。
もう一つ、可能性として感じるのが、生徒がQFTとアプリの操作に慣れてくれば、教員が関与しなくても、自分たちで自由にQFTを使いこなせるようになるのではないか?ということである。
スプレッドシートの枠は固定だし、QFTは実施のルールも明確である。これはかなり自分たちの道具として使うには強力なのでは…?