入試ネタその2。
夏の受験勉強のことを考える時期である。
国語という教科でよく言われるのが「何をやったらいいか分からない」ということである(だから、後回しにして勉強しないという言い訳になっているとも…)。
ちょっとどこから手につけたら良いかというネタを少しだけ書いてみよう。
闇雲に問題集を解いてもダメ
世の中にベストセラーと呼ばれる参考書は多いが、きちんと取り組めている生徒の数は多くはない気がする。大抵は途中で息切れするか、使い方を間違えて効果が上がらないのである。
例えば
は、現代文の勉強のスタートにやる教材としては鉄板である。実際良書であると思う。
しかしながら、これをただ漫然と一通り解いて答え合わせをしただけではなかなか成績が上がらない。
きちんと解説に書いてある言葉の意味を、自分にひいき目にならずに虚心坦懐に、解説の通りに理解できているかという吟味が何度も必要だし、時間をおいての解き直しなども必要だろう。そして、評論の知識についての解説も徐々に理解して、知識として身につけていく必要がある。
……が、実際は、問題の難易度も高くないので、「マル」がついたら解説の読解もそこそこに
などの上級の問題に手を出しがちなのである(ここのレベル差は結構大きいので、くじける可能性が高いけど…)。
なかなか、自分でどのくらい理解できているのかを把握するのは難しいので、教員に相談したり、頼れる人に相談したりしながら、自分の理解をじっくりと確かめて進めていくことになる。
間違いなく、現代文は「自分がどう考えているか」というメタ認知の力が必要である。その力はいきなり一人きりで訓練しても身につけるのは時間がかかるので、効率よくいくならば、自分ではない誰かに客観的に評価してもらうのがラクなのだ。
指導するならば……
さて、そんなメタ認知の力だけど、指導するならどこからアプローチするのが良いだろうか。
個人的には、「考え方」と「方略」の二側面をきちんと見取って指導していく必要があるだろうとは思っている。
端的に言えば、「方略」は入試のお作法みたいなものである。柔道をやるのに、受け身の練習もしないで臨んだら事故が起こるのと同じで、最低限、事故を起こさないような体の反応を訓練しておきたいところだ。イメージとして
この問題集のように、方略ごとに短く、繰り返し訓練するのが効率的だろうと思う。さすがの駿台クオリティである。入試のお作法を短く(一題長くても7分程度の問題で抜粋)効率的に、ドリルのように訓練できるのが嬉しい。
駿台クオリティなので、最低限の基礎学力がないともしかするとキツいかもしれないけど(解説があっさりしている。物足りないではなく、必要十分に書いてある)。
まあ、他にもお作法の本はいっぱいあるので、好みに合わせて選べば良いんじゃなかろうと思う。
こんな感じで、手を動かしながら勉強する方が好きな生徒もいるだろうし(これもそ質としては必要十分)。
「考え方」の指導の方が難しい。「方略」と何が違うかといえば、実際の「頭の動かし方」というニュアンスで自分は考えている。要するに初見の文章を見たときに、どこから目をつけて、どうやって手を動かして、どうやって回答を客観的に導くのか……という頭の中の動きをどう教えるかということに迷うのである。
しつこいくらいに頭の中を開陳した問題集が
ではあるが……ちょっとこれは心が折れるレベルである。言っていることややっていることはまっとうでも「実際にできねぇよ!」という気持ちにはなりやすい。
授業でこういう風にやらたらと色分けして線を引かせて答えが出てくる……みたいな授業をちまたで見かけるのだが……入試の本番は黒ペンしか使えないし、時間は20分くらいですよ……とは言っておきたい。あと、実際の読解の時に、そんなに一発で綺麗に線は引けないですよね……とも(逆に言えば、答えから逆算して線を引くところを考えて教えていませんか?という疑いは常に持った方が良い)。
個人的に、生徒の頭の中で起こっていることを捉えるのであれば、現代文の読解の形式としては、記述問題をやらせれば……と言いたいところだが、記述問題がそもそも書ける生徒ならば、自分でどの問題集を使ってもやっていけるので、あまり手助けすることはない。
本当に、授業や指導で生徒をゼロから鍛えていこうというのであれば、個人的には問題の形式としては……まあ、ネットの海でエラそうなこと言うのはやめよう。需要もないでしょうから。