多くの学校が修了式を迎え、つかの間の休息と次年度への準備に入る時期になったと思いますが、いかがお過ごしでしょうか。この年度末に、GIGA元年とも言うべき次年度に絶対に役立つ1冊が登場しました!
もし、GIGAスクール構想の端末が届いたけれども、呆然と立ち尽くしてしまっている!!という状態であれば、必読の一冊です。今すぐ図書費で入れてもらいましょう!
無理がない
本書の一番の特徴は、実際の一人一台Chromebookの活用を無理なくどうやって始められるかという点を大切に書かれているということです。
帯に書かれているように「つながる」ということにコンセプトがあるように見えます。「つながる」ということは、すなわち「効果的にクラウドを活用する」ということと同義である。
Google Workspace for Educarionの最大の強みは「共有・共同」にあると個人的には感じているが、その強みを活かすために必要な考え方と具体的なTipsやマイルストーンを説明してくれている一冊である。
各学年に1~2人がこの本を読んで、この本で言うところの「ミニGoogle先生」となって、学年みんなで少しずつ活用の可能性を探っていけると、安定してGIGAを始められそうな安心感がある。
この本のコンセプトが一番よく分かるフレーズが次の見出しの文言だ。
一人の「すごい授業」より全員の「小さな活用」
(P.43)
一人一台Chromebookという状況になったときに、圧倒的に生徒の学びの選択肢が増える。それを一挙手一投足、教員が管理しようという発想で動かそうとすれば、スーパーマンしか授業が成立しなくなるのは当然である。
豊福晋平先生のブログに詳しいので参照して欲しい。
序章は論理編から始まる意味
本書でも「道具」と使えるようになるまでの過程についての言及は多い。
(引用者注:端末を自由に使わせることを促して)授業の内容に関係のないことであっても、自分の興味・関心のあることを調べるために、タイピングしたり検索をしたりしてその技能が向上するのであれば、それは指導技術として効果的な「推奨(遊ばせ方)」です。授業時間を使った道具活用の始動時間を短縮しつつもスキルを向上させることが期待できます。(P.25)
ここだけ引用するとちょっとギョッとするかもしれないので補足しておくと、授業内だけに活用を閉じ込めてしまうよりも、自由に「道具」として生徒に使ってもらう、慣れてもらうことの必要性や価値を紹介しています。
さらに、この文言が出てくる文脈が「教員の指導とは何か」「指導技術として何が必要か」ということを論じた上で、「自由な活用→道具としての熟達」の意義を強調しているので説得力があるのです。
本書を手に取る先生方の多くは「具体的にどういう使い方ができるの?」という取扱説明書が欲しくて手に取っている可能性が高いと思うのですが、それでも長くしっかりと「背景説明」から入り、「具体的な校内研修や授業の設計の思想」などの説明を展開していく。まどろっこしいと思い、読み飛ばして後半の実際の活用編、操作編から読んでも効果はあるのですが、ぜひ理論編を大切にして欲しい*1。
きっと、行き詰まる前に、色々な対策のヒントが多く書かれているのが「理論編」ですから。
一歩を踏み出しましょう
この年度末にこの本が出たのは強烈だなぁ…!
え、デジタルトランスフォーメーションなのに電子書籍はまだないの?残念…。
*1:理論から序が始まる本は良い本って個人的に思っています。