ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

書くことの一つの参考に

10月の岩波ジュニア新書もなかなか役に立ちます。

アカデミックスキルについて、特に書くことに割と焦点を置いた一冊です。岩波ジュニア新書とは言え、侮ることは出来ず、大学一年生なら買っておいて損がない!

コンパクトな入門書

タイトルに「アカデミックスキル」とある通り、大学以降の学びで活用する「知の技法」である。

この手の解説書は大学に入ると必要に迫られて何冊も読むことになる(そういう記憶が思い出される…)。

例えばこういう形で、様々なスキルがあれこれと解説される。

 

 

……多いよ!!

要するに一口に「アカデミックスキル」と言っても、様々な側面があるので、実際問題として新書サイズにコンパクトに収めることは至難の業……そのような内容を見事にコンパクトにまとめているのが、本書である。

「岩波ジュニア新書」ということもあり、高校生であっても読んで実践をすることができるレベルに平易に書かれていながら、実際に書いたり読んだりするときにつまずくポイントやチェックポイントなどが丁寧に紹介されている。

さらにそこから自分で方法を探るための参考となる書籍が的確に示されている。

中高の探究学習を指導する際にはぜひとも参照にしたい一冊だ。

学び合いという方法

本書の面白い点は、「ピアレビュー」の技法をしっかりと紹介している点である。

この手の入門書だと基本的にやり方を羅列するだけで終わりとなり、「学び合い」というレベルまではたどり着かない。

しかも、新書レベルの手軽さで「ピアレビュー」のやり方のポイントが明示的に示されており、すぐに実践が出来るように工夫されている。

また、ピアレビュー以外にも「対話」ということをかなり重視して紙幅を割いている。ただ、単に書いて終わり、という学びではなく、書いたものをいかに磨いていくのかという道筋まで紹介されていると言える。

まさに、学ぶ力を身につけるための方法論として、アカデミックスキルの習得の道筋を示していると言えそうだ。

方法だけで書けるだろうか

技術という意味だと、本書の内容は非常にまとまっている。国語科の、特に新しい学習指導要領となっている高校の授業で、この本を参考に出来る点は非常に多い。

しかし、一つ一つの「方法」をただ授業で「教える」だけで、生徒が文章を書き出して、書けるようになると思うのは幻想である。

いくら方法をコンパクトにまとめて教え込んで、ドリル形式で練習させても、まったく方法論も身につかないし内容も膨らまないし、書けるようにならないのである。

端的に言えば、「面白くなければ書かない」のである。書くことは生徒にとって「面倒な厄介ごと」として位置付けがされてしまっている。

そもそも「アカデミックスキル」が必要になる人は、そのような場に自分を置いているからこそ、七転八倒しながらも技術としてスキルを身につけようとするし、それで書くに相応しい文章を書く。

しかし、学校の、国語の授業の「書くこと」は、決して自分の「書きたい」からスタートできるとは限らない。

「書かなくてもよかったこと」を実は「自分が書きたかったこと」なのだと気づかせて、書くことに夢中にさせるような文脈を教室に用意できなければ、なかなか集中して書く技術の向上にはつながらない。

国語科の授業の面白さはここにある。

どうすれば「書きたいもの」を見つけられるようになるのか。そういうことに挑戦することになるのだ。

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