はてなブログで「ディベート」に取り組もうとしている先生の記事を見つけました。
記事を読んだときに、思ったこととしては「おー…ディベートか。上手くいくといいなぁ」ということです。
国語の先生は知っていると思いますが、近年は国語の教科書にも「ディベート」の方法が載っていますし、実際に教育で実践している人も少なくありません。
というか、自分もちょうど一学期にディベートを行わせています。そのため、実際、どのくらいディベートを生徒にやらせるのかが難しいかということを体感していただけに、上手くいくとよいなぁと思っていました。
そして、その結果についての報告が上がっていました。
上手くいった面といかなかった面があるようです。
自分の実践と併せて、上手くいかなかったことについて、少しコメントを書いてみようと思います。
ディベートは難しい
ディベートを経験したことがある人や実際に教室で実践された方はわかると思いますが、ディベートはかなり形の決まった討論ゲームであるので、形式に慣れれば話し合いを深めることができます。
しかし、一方で形式がいい加減だったりすると比較的グダグダしやすいですし、話し合いも深まりにくくなります。
上のブログの先生も
教室内がお通夜会場みたいになる。 白熱灯論をこちら側は期待するが、なかなかそうはならない。 原因は大きく3つある。
・ディベートしたことない
・クラス全体の前で話したことない
・下調べが甘い
ディベートというものをそもそもしたことがないのなら、緊張して当然だ。
【ディベート1週目】まとめと反省 - 公民先生の雑談。
と書いていあるように、能力や精神的にも生徒にハードルが高いものになりやすいのです。
自分の実践の手順
ディベートを行うにあたって「あー…今のうちの生徒だと事故って終わるな」と思い、ディベートに入る前に十分に話せることを持たせないといけないようなぁ…と思い、以下のように準備。
- 現代社会のネタとして共感しやすく、賛否がはっきりとしている教科書の文章を読み、その教科書の論法や根拠の上げ方や問題意識を確認する。
- 教科書のディベートのページの読み合わせ。どんな形式の討論なのかを把握する。
- 教員が用意した「ディベート台本」を読みながら、実際のディベートの形式をロールプレイングさせ、どんな話し方をしたらよいかということや話す分量について体感させる。
- 図書室と連携して、ディベートのテーマについて調べ学習を行わせる。授業内で図書室で調べる時間を持たせるのがベター。
- 調べ学習を活かしてディベートの台本をグループで作成させる。
- ディベートの前に台本の中でも特に相手に伝えたいという部分をはっきりさせる。
- ディベートに入る前に、「聞き方の工夫」や「メモの取り方」のコツをレクチャーする。
- 質疑応答や作戦タイムの時に上手くいかないで困っている生徒に対しては「ヒントカード」(たとえば「相手に根拠をもう一度聞き返して、説明不足の点がないかを聞いてみよう」とか「最後に一番言いたいことを根拠を変えていってみよう」など)を渡して話し合いを援助する。
- ディベートが始まったら、口を出さない。しかし、メモを取るように促す。
- 振り返りで「話し方」「聞き方」「内容」についての振り返りをさせる。
- 立場を入れ替えてもう一度同じことをやる。
…と、まあ、簡単に書いてもここまで時間と手間をかけてやりました。
ここまで手をかけて準備をさせると、生徒の活動の様子を見ているので、だいたいどのような話し合いになるかは予想ができます。ですから、上の先生が紹介しているような「ダークホース」が登場することもないので、ある意味、予定調和で終わります。
国語は「言語技術」も育てる
国語は、どうしても「言語技術」といいますか、話し合いであれば、どうすれば上手く話し合いができるか、何を話せばいいのかということを指導していくことになります。
ですから、上のようにかなり迂遠に見えても一つ一つの過程を教えていく、手本を見せる、やってみせる、体験させることが重要になると感じています。
上に書いた、自分の実践ではディベートのテーマについて最初と最後に「自分の意見」を書かせて、最初と最後でどのように考え方が変化しているかの自覚を促すこともしています。
しかし、これだけ大掛かりな単元となると、反復して何度も国語の授業でやることは難しいのです。だからこそ、他教科で「言語活動」を行ってもらうことで国語だけでは定着が難しい言語技術の定着も実現できるし、各教科の話し合いなどをより充実させることもできるのです。
ですから、国語の教員として、こうやっていろいろとやってくれる先生と協力できる体制があるといいなぁと思います。