先日の日曜日に日本国語教育学会の提案授業を見てきました。その授業を見てしみじみと「単元学習」とは何か、国語の良い授業とは何かを考えました。
日本国語教育学会は「単元学習」を追究する学会ですから、さすがによい「単元学習」を見られました。
めちゃくちゃ厳しい条件
今回の提案授業はいわゆる「飛び込み」型の授業である。つまり、自分が普段教えている生徒ではない学級に出張していって授業を行うという形のものだ。
冷静に考えて、「初めて出会う子どもたち」に「飛び石」で授業をやることの難しさは恐ろしいものがある。また、提案授業は無限に授業を使えるわけではない。今回であれば、たった三回だけで一単元をまとめよ、しかも最後は提案授業として周りに公開せよという厳しい条件に縛られる。こんな条件でまともな単元の提案ができるのか……自分には自信がない。
それだけに、たった3回でこれほどまでに生徒との関係を深めて、「間違いなく生徒が成長した」と見学者にさえも納得させるだけの授業をしてしまうのですから、もうそれだけで戦慄します。
子どもと教員の関係をみて
たった3回。しかも2、3週間に一度で飛び石で3回。
そんな状況で生徒と関係を深めていくことができるのだろうか。正直、自分は責任も何もない(というと言いすぎかもしれないけど)、体験授業すら生徒との関係が掴めないことが苦しくて授業できない。
だから、こういう提案授業で授業をやる人がどこまで子どもたちのことをわかって授業をしているのかということが非常に気になる。また、子どもたちが教員のことを信頼しているのかということもとても気になる。
結論から言ってしまえば、今回、見学した提案授業は疑う余地なく、子どもたちと教員の間に信頼関係がある。
教室の雰囲気が、とても飛び込み授業であるとは思えないような一体感や安心感がある。どうしてこのような雰囲気が出るのか、その秘訣こそ知りたいと本気で思う。
もちろん、配られた資料の中にある学習の手引きや実践の流れを見ると「これは間違いなく信頼関係ができる」と思えるような用意周到さは感じる。提案者の人柄のよさも非常によく分かる。でも、本当にそれだけなのだろうか?なぜ、こんなに厳しい条件であるのに、温かく真剣な教室が出来上がるのだろう?
たぶん、同じことを自分がやってもこういうことはできないと思う。それはなぜなのだろう?
心の底から素材を楽しんでいる
分からないことだらけではあるけど、一つ確信的に言えるのは、今回の提案授業において授業者が単元で扱った素材に対して心の底からほれ込んでおり、また、その熱量をもって素材を学習材へと作り変えている丁寧さがあるからに違いないと思う。
振り返ってみれば、自分は一つ一つの素材に対して心の底から楽しいと思って、ほれ込んでいるのかと言えばやはり怪しい。どちらかと言えば、気分としてはもう少しシニカルで、「別にこの素材でなくてもできるかもなぁ…」とか「これでしかできないなんて思うのは傲慢だよなぁ…」とかそういうことを考えてしまいがちである。
でも、そういうシニカルな態度が悪いのかもしれない。もっときちんと素材のことを考えなければいけないかもしれない。まあ……なかなか、それが気分として難しいのですけどね。子どもの視点に立って、子どものように面白がれるような感覚が、自分には致命的に欠けているかもしれない。
だからこそ、「自分のことは自分で決める」ということを大切にしたいという気持ちがあるけど、結局、それは「素材に熱中できない」ことの免罪符を作っているだけかもしれない。
雑かもしれないね、自分のやりかたが。
思えば大村はまの素材を探すことへの熱意は色々な本で語られているではないか。
でも、それは
灘校・伝説の国語授業 本物の思考力が身につくスローリーディング (宝島SUGOI文庫)
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のような趣味的な意味ではないんだよな。
このあたりの違いは「感覚」では違うとはっきりわかるが、どうしてなかなか、自分が熱中して、素材を研究できることがない。
丁寧になろう
色々な要素が絡み合っていることだから簡単に何がよくて何が悪いのかは簡単には言えません。
しかし、やっぱりここで思うのは、大村はまよろしく国語教育がやってきた単元学習の理念をよくかみ砕きながら、丁寧に授業をやろう。
今更、ガチガチの単元学習は出来ない気がするけど、単元学習の目指した子どもを生き生きと活かす授業の理念は具体化できるはずだし、やる責任はあるはずだ。
余談
実は見学していた授業は自分の同級生です。べた褒めなのは同級生だから……いやいや、本当に凄かったからですよ。
どうして、同じ場所で学んでいたのに、ちっとも近づけないのだろう。簡単に近づけるとは思っていないけど……いやはや、こくごのみちはきびしい。