夏目漱石の「こころ」でのリテラチャー・サークルを本格始動するために、少しずつミニ・レッスンなどで生徒に視点を持ってもらえるように少しずつ始めています。
自分で読んでいくために
参考にしている書籍は
- 作者: ジェニ・ポラックデイ,ジャネットマクレラン,ヴァレリー・B.ブラウン,ディキシー・リーシュピーゲル,Jeni Pollack Day,Valerie B. Brown,Janet McLellan,Dixie Lee Spiegel,山元隆春
- 出版社/メーカー: 溪水社
- 発売日: 2013/11
- メディア: 単行本
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協同学習で物語を読む―リテラチャー・サークルとサイレント・ディスカッションを活用したリーディング授業
- 作者: 新居明子
- 出版社/メーカー: 名古屋外国語大学出版会
- 発売日: 2016/07/30
- メディア: 単行本
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などです。主に上の本が実践的なノウハウなので利用率としては高いところです。
また、リーディング・ワークショップを並行していることもあり、ワークショップ型の指導をヒントとしてやっていこうと思っています。
なぜ、リテラチャー・サークル形式でやろうと思うのかという説明としては、『本を読んで語り合うリテラチャー・サークル実践入門』の次の内容が近い。(P.56)
文学に対する反応における話し合いの重要性
話し合いはどういう点で反応にとって重要なのでしょう?(中略)ページ上のことばという表面的なレベルを乗り越えた反応を引き出すということが私たちの目指すところです。(中略)私たちのこうした目標を支えているのは、次の四つの考えです。
- 作者でも教師でもなく、読者こそが意味をつくる。
- 意味形成は個人的なものであると同時に、本にもとづいたものである。
- 文学は多様な解釈を生み出す。
- 文学に対する反応にとっては社会的なやりとりが重要である。
このような観点が大切だと強く思うのです。
一斉授業で生徒の知らないこと、気づかないであろうことを、少し下調べして話すことは簡単である。特に「こころ」などであれば、腐るほど先行研究は手に入るし、そもそも自分で探さなくても、論集が簡単に手に入る。生徒を知識でやり込める……というといい方が悪いなら、生徒に「すごい」と思わせる程度のことであれば、お手軽に可能である。
しかし、それを「文学のよさを伝える授業」とするのは、何だか勘違いのような気がしてならない。自分がそもそも文学的なトレーニングを一切受けていないのに、文学の論文や本を少し読んだくらいで生徒に講釈垂れるのが非常に不誠実に思えてならない。
世の中には文学についてよくご理解されて、生徒が何を分かれば文学を分かったといえるか評価できる方もいるかもしれませんが、自分自身が文学を理解していない以上は、そのような授業はできないだろうと思う。ま、名人芸ですな。
そうなってくると、おままごとのような「文学もどき」をやらないためにも、「何のために読むのか」「どんな力を育てたいのか」「何を将来に残してやりたいのか」ということを考えるしかないのです。
もちろん、これもまた難しい問いだ。現状では、今の自分が考えていることを、仮置きして、その仮置きから授業をしなければいけない。なかなか確信をもって正しいということが難しい。
しかし、それでも、今、授業としてやっていきたいと思うことが、上述の四つの観点を大切に、そして、生徒自身が確信できることなのです。
この辺りは今年、「山月記」について生徒と悪戦苦闘しているときに感じたことである。
自分が問いを持ち、答えを探しても何とか自分だけの物語を物語ろうとすることを大切にしたいし、自分自身を物語ることの力強さを信じたいのです。