ICT端末を一人一台持つようになると、なんでも出来るような気がする。もちろん、標準的な、一般的なアプリケーションでよいので使いこなせれば、とんでもない成果を出せるのは想像できる。
ただ、実際問題として学校の中で「なんでもできる」というのは、「業者からサービスを買ってくる」みたいなことになりやすいのは警戒しておきたい。
ICT教材バブル?
ここ数年、かなりの高頻度で学校には色々な業者からのICT教材のチラシが届く。有名な会社が肝いりで作ったものからベンチャーみたいな会社が隙間を縫って作ったようなものまで、それこそあらゆる場面に業者が製品を売り込もうと虎視眈々と狙っている。ちなみに体感としては語学系がもの凄く多く、次に多いのがドリル系。あとはGoogle for Educationのアドオンで生徒の端末を管理するものだとか…。
実際、良い製品は教室の学びのスタイルに正の影響を与えてくれる場合も多いので、せっかく端末を持っているのであれば、必要なものはしっかりと導入したいところだ。
どの製品も確かに「あれば便利だよなぁ…」と思うようなものも少なくない。ただ、そういう利便性を見ても、自分としてはあまりゴテゴテにサービスを盛り込みたくはないのである。
せいぜい、GoogleやMicrosoftなどの一通りのアプリケーションと、比較的、教育現場と相性の良いCanvaやFlipやEdpuzzleくらいをサテライトで使うくらいで、他は副教材として必要があれば一つ二つくらい……と思うのである。
アプリが増えるほど混乱する
少なくとも「授業者が授業を上手くやることを期待して」アプリケーションを無限に増やしていくと、だいたい大人も子どもも大混乱して墜落する。大人が無理矢理主導して、ある特定のサービスを使わせようという入れ方は、想定を外れた動きをされた段階で混乱が起こる。ICT端末なんて教員の思い通りに操ることなんて無理な話なのだから、「こう使わせたい」という強い縛りで導入するのは危ない。
もちろん、何かサービスを導入するということは「こういうことが出来てほしい」という見通しがあるから導入するわけだけど、「こういうことをさせて自分の授業の見栄えを良くしたい」という目論見であれば、それは上手くいくはずがないのだ。ICT端末は強烈に個別化を進めるのだから。
大人が良いサービスだと思って使わせれば子どもが変わるという考え方で、サービスだけ持ち込めば、それは死蔵されて終わる。費用対効果は最悪だ。
練習しつつ、遊ばせる
ツールは練習しなければ上手くは使えない。だからこそ、授業で導入してすぐに上手くやってやろうという目論見はだいたい失敗する。ツールで遊び出したりツールの操作につまずいたり、そういう回り道を前提にしながら進むしかないのである。
遊びを多く持っておくと、ある時になればそれが複利となってきちんと大きな効果で返ってくる。
できるだけシンプルな道具をシンプルに使い続ける。そうすると、当たり前の授業の姿が、恐ろしい勢いで加速していき、全然ちがう姿の授業になっているのである。
意外と、しっかりと活用を続けている教室のICT活用は地味である。