今週のお題「読書感想文」
夏の終わりに思い気持ちに。
安楽死をめぐる問題
この本はnoteで連載されていたものが書籍化されたものだ。
安楽死を願う患者と向き合う緩和ケアの専門家の物語である。
この物語を読み終わるころには、読者は「日本で安心して死ねる場所」がないと語る患者の言葉の重さに向き合うようになるだろうと思う。自分が死ぬという逃れられない現実に直面させられながら、自分で自分のことをだんだんと決められなくなっていくという恐怖と慚愧を、強烈に感じさせられてしまうのである。
正直、自分の今のメンタルでは読むのが苦しい本だった。身体が、少しでも不調で思い通りにならないことのもどかしさと、悪化していく事への怖れがある状態で読めるような本ではなかったのだ。
嫌でも、自分の終わりという瞬間を意識させられないではいられない。今、自分が終わりになるとしたら、何を残すだろうか。何も成し遂げることが出来ないという後悔だけである。
家族が終わるということ
病によって、唐突に命が奪われることによって、終わりを迎えるものは自分だけではないことも、意識させられる。
生まれたときから誰かの家族であることが当たり前である人間が、理不尽に病で家族であることを終わらせられてしまう。家族の終わりということをあまり意識したことはなかった。ある程度の年齢で、逝去してしまうことに対しては諦めがつくというか、お墓参りで個人を偲ぶような余裕もあるように、そこで家族が失われるという印象は幾分、薄い。
しかし、唐突にやってくる理不尽に対してはどうだろうか。
ある人物を失った家族が、そのままの家族でいられるのだろうか。ある人間の喪失が、家族というものを失わせてしまうのではないかと思うのである。
残された家族なんて言い方が言い古されているが、本当に家族はそこに残るのだろうか。
安楽死を選ぶ家族は……?
理不尽な運命に対して、自分でけりをつけてしまうことで、何とか壊れないで済むものを残したい……という気持ちがあるのかもしれない。
メンタルの調子のよいときに
あまりに、話が重いので、メンタルの調子の悪いときには読まない方が良い。色々なことを受け止める余裕があるとき、読んでみると良いでしょう。
生徒には読んでもらいたいと勧めるだろうな、きっと。