ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

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あなたは大丈夫? 学校の著作権の話

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オンライン授業の影響もあって著作権の話はかなり神経を使っている。

以前にもこんな記事を書いた。

www.s-locarno.com

しかし、これだけ話題になっている「改正著作権法第35条運用指針(令和3〈2021〉年度版)」についても、自分が自信を持ってちゃんと理解しているとは言いにくい。

そういう困った感に対して、折良く、助けになるような書籍を見つけた。

このサブタイトルが学校の現状をよく分かっている人の強烈な毒舌だなあと感じました(笑)。

一問一答形式で事例から学ぶ

この本は三章から成り立っており、Ⅰ章が概説的な話、Ⅱ章が実例を挙げながらの一問一答形式、Ⅲ章がコラムという形になっている。

一番の注目点はⅡ章の一問一答形式で学校で「あるある」な事例に対して「Yes」「No」で回答するというわかりやすい解説部分だろう。

リンク先を確認してもらうと実際の本文が試し読みできるようになっているので、雰囲気をつかめると思うが、だいたい1ページの中に疑問に対する明確な答えと、参照すべき資料が提示されている。

全ての内容を詳細に読むのは時間があるときにするとしても、ちょっと「これはやってOKなんだっけ?」というものをサッと引いて、確認するという使い方に便利そうである。なんといっても上述の通り、この本で挙げられている事例はどれもこれも、思わず学校にいると「やってしまいがち」な事例ばかりなのである。

オンライン授業に関わるSARTRASなどの話も詳しく解説されているが、それ以上にページが割かれているのが、オンラインとは無関係に、これまでにもやってしまっていただろう著作権をめぐるあれこれ(婉曲表現)を、明確に「Yes」か「No」かで解説してくれているので、非常に分かりやすいのだ。

職員会議で読もう!

この本の内容は、ぜひとも校内で周知することが望ましいと感じます。

著作権35条のおかげで、学校はだいぶ自由に著作物を授業の中で用いることが出来るようになっているが、それ故に、著作権に対する意識があいまいになってしまっていることは大いにある。

今後、オンライン授業が増えていくことを考えると、ここで立ち止まってきちんと著作権を尊重するとはどういうことかを考えてみる必要があるだろう。

本書のよい点は、事例の説明だけではなく、補足的に書かれているコラムを読むと、「著作権という概念」がどういう観点で成り立っているかなどを考えるために役に立つようになっている。

「他人が作ったコンテンツを無断で使い回してはいけない」が、著作権の基本です。多くの人が知っています。

ところが、「著作物とは何か」「演奏権とは何か」「無断コピーして良い場合とは」になると、著作権はたちまち、やっかいなものにみえてしまいます。サッカーの「オフサイド」を言葉で説明されてもピンとこないのと同じです。

著作権の基本的な考え方を知り、「やって良いこととダメなこと」「自由に使える場面」「補償金のメカニズム」などを学べば、複雑に見える著作権ルールも筋が通った存在に見えるかもしれません。

(「おわりに」より)

読み終わってみると、このコンセプトがよく分かります。筋が通っているから、読んでいるうちに「このパターンはあれかな?」と自分で分かるようになる感じがします。

この本の内容を職員会議でちゃんと読み合わせていけば、かなり今、学校現場でやらかしてしまっている著作権をめぐるあれこれに対して、対応ができるようになるのではないかと思う。

さて、ここで一つクイズです。

この本は著作権を学ぶのにとてもよい本なので、職員会議で先生方と読み合わせようと思います。その時に、この本の内容の一部をコピーして全職員に配って読むことは、学校内での利用なので著作権侵害にはならないでしょうか?

このクイズの答えは……本書を読めば、似たような事例を見つけられると思いますよ!

(※厳密な答えは最後は裁判の答えを待つしか無いにせよ…)

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