ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

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【書評】EdTechについてどれくらい知っていますか?

8th grade Math iBooks Authors- in progress

2018年も終わろうとしていますが、今年はEdTech元年とも呼べる一年でした。自分も機会があって、今年一年は割とEdTech関係について関わってきました。

www.s-locarno.com

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インパクトとして大きかったのは、やはり経産省の「未来の教室」とEdTech研究会の「第1次提言」である。

www.meti.go.jp

実際に、Facebookページを見ていると日進月歩でプロジェクトが進んでいることに、かなり期待感を抱いています。

ただ、そんな時期だからこそ、またシンプルなところから理解を深めていきたい時期である。今回紹介する本はそのような目的にぴったり合う一冊である。

EdTechが変える教育の未来

EdTechが変える教育の未来

 

非常に平易で、読みやすく、それでいて網羅的であるので、EdTechが興味がある方にはお勧めしたい一冊です。

EdTechの今を知るために

本書はEdTechにまつわる情報をかなり丁寧に紹介してくれています。

以下に目次を紹介します。

第1章 なぜエドテックが必要なのか
第2章 エクステックが起こす変化とは
第3章 海外で進むエドテック
第4章 徐々に増えてきた日本のエドテック
第5章 文科省・経産省の動き
第6章 教育をデザインし直そう

個人的にこの手の入門書の良し悪しを判別する基準として「背景説明からする本はよい本が多い」というものがありますが、本書もまさにその典型例(笑)。いきなり、日本の話をするのではなく、ちゃんと背景から必要になってきた理由や有効性の高さを説明してくれています。

だからこそ、入門書として、ある意味、経産省の「第1次提言」をいきなり読むよりも、なぜこのタイミングで経産省からEdTechが出てくるのだろうということなども感じさせられる本となっています。

個人的にぜひ読んでもらいたいのが、第3章の「海外で進むエドテック」である。ここでは当然、アメリカの事例は多くを割かれて説明されているが、比較的、中国の事例について多く説明されているのが、面白いところ。東アジアの国であり、比較的、個別化などについては欧米のような体制ではない中国が、EdTechにかなり力を入れていることを知り、その意味を考えることは大切なのではないかと思う。

そもそもEdTechのサービスを…

個人的に教員の良くないと思うメンタリティに「実態をよく分かっていないけど、とりあえず賛否を議論する」みたいなものがあるように感じている。自分もよくやりがちだが、それは「明日の授業をどうするか」と日々考えているからやってしまいがちなことである。

だから、EdTechについても「どんなサービスが欲しいか」とか「どんな活用の仕方が有効だろうか」とか「そもそもどんなサービスがあるのだろうか」とかに意識が向く前に、「EdTechをわざわざ金かけてやる意味がない」だとか「いや、イマドキICTくらい当たり前だ」だとかというような信念対立になりやすい。

まあ、そういう議論は教育の目指すところをすり合わせていくなかでやるとしても、当面、やはり優先度が高いこととしては、実際に今あるEdTechサービスがどのくらいの数があり、どのようなものがあるのか、ということを理解することなのではないかと思う。

さて、ここで質問です。

「EdTech」と呼べるようなサービスやアプリなどが現状、どれだけあると思いますか。

 

ClassiだとかZ会だとかスタディサプリがなんかやっていたなぁ……とか、Googleとか最近話題だよねぇ…とかは知っているかもしれません。

 

答えは本書の第4章をご覧ください。有名なものからまだここ数年に始まったばかりのサービスまでかなりの数が紹介されており、びっくりされる方は多いのではないでしょうか。ちなみに巻末には「エドテック 国内サービス一覧」が掲載されていますが、70以上のサービスが紹介されています。

 

知らなくて大丈夫?

いやいや、生徒の方が進んでいるから、結構、油断していると足元を掬われますよ。

例えば「Clear」というサービスをご存知でしょうか?

www.clearnotebooks.com

 

自分の授業の板書が知らないところで実は共有されている可能性がある……というのは好意的な言い方で、自分の授業よりも優れた板書やノートを見て生徒が勉強している可能性があるということです。

もちろん、逆に「そういうことじゃないんだけどな…」ということを生徒が勝手に進めてしまう可能性もあるのです。

だから、良い悪いも必要なところではありますが、まずはちゃんとどのようなものがあるかということを知ることから始める必要はあると思うのです。その意味で、本書がこれだけ幅広く紹介してくれているのはありがたいはずです。

そして、日本のこれから

もちろん、本書は日本の教育のこれからについても言及があります。

このように、学習者の習熟度や苦手克服を解決できるサービスが増えてくると、 学校でみなが同じ問題、同じ進度で学ぶ意味は何なのかを考えさせられてしまいます。紙で問題を解くのが良い子、動画で理解した方が早い子、先生が寄り添いながら教えた方が良い子など、 子どもたちの学ぶ特性はさまざまです。学習の選択肢が広がっていることを知り、 一人一人に合った方法を上手く取り入れていくことができれば、もっと子どもたちの力やモチベーションを伸ばせると思います。

テクノロジーの効果を「自動化」「効率化」「生産性」 など、機械的な側面にばかり注目するのはやめましょう。「人間の勘 VS テクノロジー」 という対立項もやめましょう。科学は万能ではなく、人間の勘でしか説明できないものは確かにあります。しかし、 テクノロジーでできることと、人にしか理解できないことが何であるかを明確にし、うまく組み合わせて使うことこそ、もっとも進化した教育の姿ではないでしょうか。

私は、 もっとも変化が問われるのは、学習者とリアルに顔を合わせる教育者の存在だと思っています。 テクノロジーが進んでいつでもどこでも学べるようになると「学校や教師はいらない」といった意見も出てくるのですが、私はそうは思いません。 テクノロジーは誰に対しても有効なわけではなく、機能しない学習者の層も存在する からです。

決して、テクノロジーを妄信して、すべてにテクノロジーを取り入れろという話ではありません。

経産省の資料で個人的に一番、大切だと思っているのが「学習者中心」の概念*1だと思っているのですが、それに通ずる観点だと感じます。

「学校」に関わって生活していると「今の学校で」という発想で物事を考えがちですが、「学校の外側」からの観点であり、「選択肢を提示してくれている」ということに価値があると思うのです。

当然、本書には今年のEdTechに関わる動向も解説されていますので、今からでも今年の動きを理解していくことができます。

ぜひ、2018年のことは2018年のうちに。興味ある方はぜひお読みください。

*1:それは「学校」すら生徒の学びの選択肢の一つに過ぎないというラディカルな形である。ただ、セーフティーネットとして学校があることを考えると、すべてをそちらに移行は問題があるとも思っている。文科省が言えないことを経産省が言い出して、色々な観点を相対化したこと自体に意味があると思っている。

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