楽しみにしていた西岡加名恵先生と石井英真先生が編著の新刊が届いていた。

Q&Aでよくわかる! 「見方・考え方」を育てるパフォーマンス評価
- 作者: 西岡加名恵,石井英真
- 出版社/メーカー: 明治図書出版
- 発売日: 2018/10/12
- メディア: 単行本
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明治図書なのでお手軽な入門本かなぁと思っていたら、届いてみてびっくり。171ページに及ぶなかなかのボリューム感である。そして、ページの文字の密度が高いw
まだ、パラパラと流し読みしただけであるので、詳細までは読めていませんが、目についた良いなぁと思った点を紹介しておきます。
コンパクトに原理から
明治図書ということもあって、基本的に一つの項目につき、見開き一ページである。しかしながら、大雑把に分かりやすくというよりは見開き一ページに言いたいことを何とか書き込もうという熱意を感じる(笑)。
基本的に各章の初めが「~とはどのようなものですか」ということから始まっていることからも分かるように、できるだけ授業観や目指すべき学力観を揃えて考えてもらおうという姿勢が見える。
まえがきに、本書の姉妹編として

「資質・能力」を育てるパフォーマンス評価 アクティブ・ラーニングをどう充実させるか
- 作者: 西岡加名恵
- 出版社/メーカー: 明治図書出版
- 発売日: 2016/09/23
- メディア: 単行本
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を挙げているが、その理由もよく分かる。
本書が実践を多く紹介するというよりも、実践をするにあたって行き詰りそうなポイントについて原理・原則から解説しようとしたものであり、2016年の本の方が実践例が多く紹介されている。
なるほどなぁ……二冊を併せて読むことで、少しずつパフォーマンス評価のやり方や効果をイメージできるようになっているのだなぁ。
付け加えておきますが、本書は何が何でも全てをパフォーマンス評価にしろなんて書いていない。むしろ、カリキュラム・マネジメントの観点から、必要な時に必要なパフォーマンス課題を用いるように述べられている。
単元の内容がパフォーマンス課題に適しているかどうかは、「知の構造」と関連づけて考えることもその判断の助けになります。(中略)パフォーマンス課題については、「原理や一般化」に焦点を合わせて考えることが有効であり、単元のねらいが知識やスキルの定着にあるのか、それともそれらの活用にあるのかを見定めることが、その単元がパフォーマンス課題に適しているかどうかの判断につながります。(PP.32-33 本宮裕示郎 第2章「パフォーマンス課題はどのような単元で用いるのが適していますか?」より)
明治図書の本だとこのような表現はあまり見かけない(笑)のだが、こういうところに丁寧さを感じるのです。
ルーブリックについては結構な記述量
パフォーマンス評価と切り離せないのがルーブリックであるが、かなりの分量を割いている。
今回、自分が目を引かれたのがP.55の「ルーブリックとチェックリストを混同しない」という項目である。これまで自分も散々、ルーブリックとチェックリストは違うと述べてきたが、やっと書籍の形で説明しているものが出てくれて、自信を持つことが出来そうです。
チェックリストで評価できるものについてはパフォーマンス課題やルーブリックではなく、チェックリストで評価すれば足りるということです。(P.55 森本和寿 第3章「パフォーマンス課題を評価するルーブリックを作る際にはどのような留意点がありますか?」より)
この一文がどれだけ世の中に反省を求めることになるのか……。
結構、深刻に考えるべき問題だと思うのですよね。
国語の実践には渡邉先生も…
今回の国語の実践例として渡邉久暢先生のご実践(詳細な内容はこちら)が紹介されています。
hisanobuwatanabe.cocolog-nifty.com
リンク先の渡邉先生のコメントに
「パフォーマンス評価ではルーブリック!」のように、考えるのではなく、目標として措定した育てたい学力を培えたかどうか、どうやって確認すると良いのか、を考えていくことが大事だと思っています。
とありますが、まさにそのことを大切にして書かれているのが本書だよなぁと感じます。
渡邉先生の実践については本書をご購入いただいてご覧いただくべきだと思うのでここで詳述はしませんが、せっかくなので感想を一言だけ書いておきます。
実に短歌の「よさ」と正面から生徒に向き合ってもらった単元だなぁと感じます。短歌とどのように生徒を出会ってもらえるか……その出会いが不幸にならないために、かなり丁寧に「思わず考えたくなるような」素材や問いを丁寧に揃えられているのだなぁと感じます。
自分が行った短歌の単元は
のようにかなりお気軽に短歌に触れさせる、ハードルを下げてとにかく遊ばせるという面に集中してしまっていて、なかなか「言葉の力を伸ばす」というところにたどり着けていないと思っているのです。
本当、「素材」が勝負だなぁ……と自分の研究の責任を感じます。
生徒の活動を期待するならばぜひ
本書はアクティブラーニング型の授業をしたり活動中心の授業をしたりしてみたいと思うのであれば、ぜひ一回は目を通してみるとよい本だと思います。
なかなか読むのに優しくない部分もありますが、グッと堪えて、きちんと理解して授業を進めていくことに価値があります。