国語科の中であまり人気のある分野じゃないのですけどね……文法。
今日、タイムラインのどっかで関連性理論という語を見かけた気がするし、微妙に変な感じがしたので、以下に参考文献挙げておきます。
— ロカルノ (@s_locarno) 2019年1月5日
文法ネタをたまには書きます。
まあ……自分がすっかり日本語学や文法方面の勉強をサボって疎くなっていることを再確認しただけになっていますが……。
語用論関係
この前にツイートしたのでまとめとして、ここに挙げておきましょう。
語用論を勉強する定番と言えば
これが網羅的にあらゆる分野を説明しているので、これを読むのが一番、話が早い。ド定番と言ってよいかと。
最近出た本は、日本語に限定しているので、こちらのほうがもしかすると読みやすいかもしれない。
今日、届いて中身を確認しましたが、これが分かりやすくて良いですね。『新版 日本語語用論入門: コミュニケーション理論から見た日本語』 https://t.co/o0MUocm77A
— ロカルノ (@s_locarno) 2019年1月5日
新版 日本語語用論入門: コミュニケーション理論から見た日本語
- 作者: 山岡政紀,牧原功,小野正樹
- 出版社/メーカー: 明治書院
- 発売日: 2018/08/13
- メディア: 単行本
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これは語用論を理解しようと手を付けるのによい本だなぁと思いました。
大学の教科書という性格のものなので、独学にはやや難しいかもしれないが、少なくとも触れておきたい語用論の基礎理論は網羅されている。
直接、国語の授業の例えば読解の解釈などに使えるのかと言われたら、そういう代物ではないだろう。だが、割と題材の文章の分析や授業での指導などを勘や経験に頼りがちなことを考えると、少しは何か手掛かりになる……のか?
実は個人的には結構、難しいだろうなぁと悩ましいところ。
話を元に戻すと、本書には上述の「関連性理論」などもグライスの協調の原理を一から説明したうえで述べられているので、理解しやすいのではないかと思う。
さらに一方踏み込むならば
もう少し踏み込んで細かく見るならば、訳書になるので読みにくいがこちら。『最新語用論入門12章』 https://t.co/BmOZpWd4GV
— ロカルノ (@s_locarno) 2019年1月5日
- 作者: ディアドリウィルスン,ティムウォートン,今井邦彦,Deirdre Wilson,Tim Wharton,井門亮,岡田聡宏,松崎由貴,古牧久典,新井恭子
- 出版社/メーカー: 大修館書店
- 発売日: 2009/12/01
- メディア: 単行本
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これは完全に関連性理論の話なので、やや勉強が必要。
そもそものスペルベルとウィルソンの原著は日本語訳されてます。たぶん、語用論周りに詳しくないと読めない。 『関連性理論―伝達と認知』 https://t.co/WRcFNsQm6l
— ロカルノ (@s_locarno) 2019年1月5日
そもそものそもそもになるけど、関連性理論はコミュニケーションについてのグライスの語用論などを踏まえて、発展的に出てきている部分があるから、「協調の原理」を理解していた方が望ましいのでは?と思う。たぶん、推意だとか想定だとかのテクニカルタームも知らないと難しい気がする。
— ロカルノ (@s_locarno) 2019年1月5日
個人的に、語用論周りで国語科教育で一番、手っ取り早く(というと下品)かつ掘り下げていく必要性も高いと思っているのが、敬語や「配慮表現」つまりポライトネスの周辺なのです。実際、それで卒論、修論も書いているくらいに付き合いは長いのです。
あまり国語科教育の界隈で話題になることはないのですが、そんな研究分野があります。
井出祥子の配慮表現の説明や日本語のポライトネスの拡張の話だとか出てきているのも、たぶん国語科教育だとなかなか議論に上がらないところだけど、コミュニケーションにおいてはかなり面白いところなので、個人的に教材化の余地があると思っているところがたくさん挙がっているのもポイント。
— ロカルノ (@s_locarno) 2019年1月5日
上で紹介している本は、日本語の「配慮表現」のことを「わきまえ」という概念で説明しているものです。大雑把に内容を紹介すると、国語科の先生だと例えば「世間」だとか、そういう評論を読むことは多いと思うのですが、そういう概念をもう少し精緻に言葉の側面から説明したものになります。
この本の背景には井出氏の以下の研究があります。
さすがに30年以上前の研究なので色々とあるのですが、それでもこの論文の良いところは、量的な調査によって敬語行動の日米比較を行っているのですが、その結果の整理の仕方が非常にうまく、視覚的に鮮やかに理解できるのです。
「敬語は日本だけ」みたいな言説を相対化する観点として知っておいてよいかなぁと。
もう少し、ポライトネスを深めるのであれば、
がブラウン&レヴィンソンの理論をかみ砕いて説明しています。
でも、実際、教室で読むのであれば
で十分、面白く読めるかなぁと思ったり。
高校だと敬語が問題となるのは古典の方が多いわけですが、単純な暗記や識別で終わらせられているようなぁと思ったりします。こういうポライトネスの話でちょっと読解の仕方に新しい提案が出来たら面白いよなぁと思ったりして、ずっと放置して早数年。
本当は、もう少し高校でも敬語は言語のストラテジーという意味で授業で扱われてもいいかなぁと思ったりもするけど、具体的な提案も思いつかないで放置して早幾星霜。
なお、語用論ネタの記事を過去に書いてます。
文法の授業のために
そもそも中学校で行うような文法の授業の役に立つような本もあります。
二年前に紹介した本もぜひご覧いただきたいところですが、最近、読んだ本だと本当に以下の本がよかった。
この本、大学の初年次教育向けのテキストだけど、題材が中学校で扱うような言語事項とも重なるから、中学校の文法授業のネタに使えそう!当たりだった!※但し、日本語学の知識が無いとたぶん使い方は分からない?/『アクティブ・ラーニング対応 日本語を分析するレッスン』 https://t.co/6CopenMcdJ
— ロカルノ (@s_locarno) 2019年1月6日
大学の基礎教育のためのテキストなので題材も分かりやすい。
例えば「しりとりのルール」を考えることで、語の性質について考えたり若者ことばを題材にして活用などについて考えたりあいまい文を用いて係り受けなどを考えたり……少し工夫すれば中学生の文法の授業に繋げられそう。
あまり人気はないけど…
国語科教育の界隈であまりメインストリートには来ませんが、それなりに面白く授業のネタになることが多くあるのが日本語学の分野です。未開拓だからこそ掘り下げる余地がある……はず。
そもそもかつての国語学者は国語教育に結構口出しして論争をしてますし…(笑)。
文法やろーよー。