ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

国語教育の範囲と授業の範囲

今月の『国語教育研究』(No.628)の特集は「他教科と関連を生かした国語授業」と「調べ学習」というテーマ。いずれもいわゆる国語の典型的な授業に留まらず、総合的な、探究的な学びとも関連してくるテーマの話である。

それだけに読んでいて、どのように扱うべきかということに迷いが出る。

言葉で活動を学び、活動から言葉を学ぶ

国語教育において、言葉と活動の関係については色々と議論されている。そもそも人間が言葉で世界を認知している以上、学ぶ対象と言葉の関係は切り離すことが出来ない。国語科は言葉の教科であるので、教科としての役割としては言葉の力を身につけるようなことが主眼になるけど、その際に授業で扱う対象も学ぶことになる。

その二つについて上手く峻別できるものばかりではないけど、あまり扱う対象の方に寄ってしまうと言葉の学びが上手くいかないイメージもある。

この辺りの国語科の性質は千葉大学名誉教授の首藤先生の言うところの「二重カリキュラム」の話であるので、興味ある方は参照されたい。

www.jstage.jst.go.jp

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何にしても国語科という授業の枠が何をどこまで取り組めば良いのだろうということについては非常に悩ましい。

自分も授業で探究的な単元に取り組むときは、どうしても国語科の典型的なイメージの授業ではなくなる。ちゃんと生徒の言葉に注目していないと、見た目の活動の派手さに目的を見失いそうにはなる。

今回の特集で面白かったもの

その観点から見たときに、今回の特集の提案で面白かったのは、小特集の溝上剛道先生の論考で、調べ学習において「中の問い」「外の問い」という整理をして単元を考えていたことだ。

厳密に書くと長くなるので大雑把にまとめると、前者が内容に関することで、後者が言葉の形式に注目するものである。

この二つの問いを単元の中でどのように子どもが持って、学びを進めていくのかという分析が書かれていた論考なので、言葉をめぐって内容と形式についてどのような捉え方ができるかを考えるのに参考になります。子どもの変化を丁寧に記してくれている点も、興味深い記録だ。

ちなみに、この論考の単元のテーマは「デジタル機器と私たち」なので、デジタル・シティズンシップ教育の観点からも興味深いところだ。言葉と内容の用法を扱うからデジタル・シティズンシップ教育と国語科教育は相性が良いと改めて思うところだ。

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