研究会の感想はどうしたと言われそうですが…。色々、考えることがありまして。
そんなわけで休みを活かして新刊の『問題解決大全』を読み切りました。
これは、読書クラスタ界隈では有名な読書猿さんの二冊目の本です。前作の『アイデア大全』も他に類を見ない強烈な本でした。
www.s-locarno.com
しかし、その全書にも増してパワーアップしているのが本書です。
自分が書評を書くまでもないのだけど…
自分なんかが書評を書くまでもなく、ご本人が本書の紹介をブログでされています。
「実用書であり、かつ人文書であることを目指して」いるというように、本書の本領は全書と同じく、ハウツーの紹介だけでなく、そのハウツーの生まれてきた背景やその方法で解決されてきた問題をめぐる物語が、これでもかという注釈と文献の紹介で書かれております。博覧強記ってまさにこういうことを言うんだなって思います。
「フェルミ推定」だとか「KJ法」だとか非常に有名な手法も紹介されていますが、それぞれの手法の「レビュー」の充実度が半端でない。自分がその方法で解決すべき問題を持っていなかったとしても、ただただ読み物として面白い。
逆に、普段から比較的活用しているような方法であるのに、全然、そんなストーリーがあるなんて知らなかったというものもあって、目から鱗がボロボロと落ちてくる。
まさに「実用書であり、かつ人文書」である。
本書の本質は「問題の認知」することにある
本書では解決の方法として37の方法が紹介されているが、そのうち、14個の方法が「問題の認知」の方法論である。
こうなる理由については本書の「はじめに」を読めばよく分かるので、そこの内容を繰り返すことはしない。自分なんかが中途半端に語るより、よほど本書を読んだほうがよく分かるから。だから、自分の思うことを書こうと思う。
つまり、「問題解決」とは、第一に「問題」だと認識されているものをきちんと掘り下げてきちんと正しく「問題は何か」と理解することであると理解される。どうしても、現前する問題に対しては場当たり的で反射的な解決方法を探しがちであるし、その方法で満足しがちである。しかし、そうして深く考えないために適当に対処してしまうことで余計に問題をこじらせることはままある。とはいえ、一度認識した問題を改めて正しい「問題」として捉えなおすことは難しい。だからこそ、問題の認知のための方法を掘り下げることには重みがある。
第二に、実は問題の認知の方法について知れば知るほど、普段の生活で気づいてない「問題」に気づくようになってくる。問題とは普段は言わないような事象について、本当に丁寧に整理しなおすと自分が今抱えている現実に、解決できるはずの問題が数多くあると気づかされる。我々は人間である以上、様々なバイアスに捕らわれて生きている。そのバイアスは気づくことすら難しい。
だからこそ、こうやって様々な側面から「問題」とは何かを掘り下げる手法を知ることに意味がある。本書はまさに人々が捕らわれてきたバイアスとそのバイアスを克服するためにどのように「問題解決」の方法が工夫されてきたのかが、物語として頭の中に入ってくる。だから、とても読書が楽しい。
誰に薦めればいいのかな
この本はとてもおススメだけど誰に薦めたらこの楽しさを分かってもらえるか悩む(笑)。
生徒に薦めてみても面白いだろうし、職員室で広めてみても面白いかもしれない。
でも、この問題が問題だと認知されるということの「発見」に対する快感は、誰に薦めたら一番反応してもらえるのかってとても気になります。