ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

ICT活用と学校・授業

congleton

ICT活用についての覚書です。少し前に書いたものをリバイバルして書くので資料は古いです。まあ、昨日の補足記事のようにとらえてもらえれば。

www.s-locarno.com

この記事の参考資料

「ICTを活用した教育の推進に関する懇談会」報告書(中間まとめ)の公表について:文部科学省(以下「ICT教育懇談会」)

昨日も紹介したこの資料に基づいて書きます。平成26年なのでテクノロジーのスピード感からすれば、少し古いのには注意。

最近の文科省からの発表資料としては

平成28年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果【速報値】について:文部科学省

教育の情報化加速化プラン~ICTを活用した「次世代の学校・地域」の創生~:文部科学省

を目を通しておく必要があると思います。

特に後者については、新学習指導要領の答申を踏まえたうえでの議論となっているため、学校として議論のスタート地点には適しているはずです。

今日の記事は、3年前に自分がメモ書きで書いたものをテキトーに要約して記事にするので、この資料については触れておりませんが、注でいくつか関連する部分は紹介しようかと思います。

ICTによってもたらされる新しい状況

学習指導要領の改訂などの外圧によって、学校はICTの活用について考えなければならないと重い腰を上げたように感じるが、学校が好もうと好むまいと、社会の方がすでにICT機器なしには立ち行かないほどに、ICTが生活に浸透している。そのような社会の状況を考えたときに、学校だけがICTを無視した授業を行うわけにはいかない。

例えば「ICT教育懇談会」では、「ネット依存により日頃の生活リズムが崩れ、学習時間が奪われるなどの影響が生じていることや、ネットいじめ等にまつわる児童への指導上の課題」があると指摘されているが、このような問題に対して学校はICT機器を子どもから取り上げるという指導では根本的な解決にならないのは明らかである*1

実際に日常の生徒指導に当たっている教員であれば、SNSなどによって生徒の問題行動が増えていることは身をもって感じていることである。このようなスマートフォンによるトラブルに対しては、教員は「家庭の責任だ」という人も少なからずいるのだけど、子どもたちを取り巻く社会環境が大きく変わってきていることを考えれば、学校で様々な指導の必要性が出てきているということだろう。

逆にICTを活用することによるメリットとしては圧倒的な情報量に生徒が触れることができるようになることであり、また、情報の編集や加工もしやすくなることである。もちろん、だからこそ著作権を初めとする様々な注意点が生まれてくるわけであるが、だからこそ、学校での指導の責任が問われてくることになる。より多くの情報に触れられるのだからこそ、正しい活用の仕方の指導が学校において必要である。

ICTの活用によるメリット

「ICT教育懇談会」では以下のような特長を挙げている。

  1. 時間や空間を問わずに、音声・画像・データ等を蓄積・送受信できるという、時間的・空間的制約を超えること
  2. 距離に関わりなく相互に情報の発信・受信のやりとりができるという、双方向性を有すること
  3. 多様で大量の情報を収集・編集・共有・分析・表示することなどができ、カスタマイズが容易であること

このような特長を活かすことで以下のような授業の可能性を論じている。

  1. 距離や時間を問わずに児童生徒の思考の過程や結果を可視化すること【思考の可視化】
  2. 教室やグループでの大勢の考えを、距離を問わずに瞬時に共有すること【瞬時の共有化】
  3. 観察・調査したデータなどを入力し、図やグラフ等を作成するなどを繰り返し行い試行錯誤すること【試行の繰り返し】

このような指摘に基づいて、筆者なりに国語科の授業での活用例を考えると、以下のような学習活動が比較的すぐに思いつく。

  • 生徒の書いた作文を中一から高校三年まで記録しておき、必要に応じて自分の学習の成果を振り返り、成長を確認できるようになる(特長1)
  • 様々な音声教材を聞かせることができる(特長1)
  • 発表の様子を録画したり、話合いの音声を録音したりすることが容易に行えるようになる(特長1)
  • 校外で集めてきた資料やデータなどを保存しておき、授業で容易に共有できる(特長1)
  • 本文を読んだ感想や問題に対する答えを、その場ですぐさまクラス全体に共有できる(特長2)
  • 課題をオンライン上で送受信可能となり、添削や再提出が容易になる(特長2)
  • 生徒同士の学習成果に対して簡単にコメントをつけ合うことができ、協働して学習を深めていくことができる(特長2)
  • インターネット上の情報を学習理解のために利用できる(特長3)
  • レイアウトの編集などが容易となるため、レイアウトについて試行錯誤しながら表現の効果などについての学習を深めることができる(特長3)
  • 学習活動の成果を教室内だけでなく、学外などにも容易に公開できるようになり、教室を実社会へと開いていくことができる(特長3)
  • 「読み取った内容を映像にしてみる」「映像をノベライズしてみる」などのメディアミックスの学習活動ができるようになる(特長3)
  • 「動画の作成」「プレゼンテーションの資料を作成」など、教室で行いにくかった言語活動についても容易に行えるようになる(特長3)

ざっくばらんに挙げたので、実際に行うには準備が必要であるし、必要性があるかは吟味しなければいけない。また、「動画を作成する」「レイアウトについて話し合う」というようなことは、従来の「国語」というイメージから離れているために、「そのようなことは国語ではない」という反発を食らうことは多いのだが、国語でしょうね*2

ICTを活用するのであれば、ICTが必要となる文脈を用意するべきである*3

2020年度の新テストとの関連で少し考えるのであれば、そのテストの狙う「学力」として「複数の情報を統合・整理していくこと」があるが、そのような学びのためのツールとしてICTは非常に強力であるはずだ。

本日のまとめ

  • 学校よりも先に社会がICTを必須としている以上、学校も内向きに閉じこもってICTを使わないで済ませることはできない。
  • 特長を整理して理解し、授業の設計においてはどの側面を活かすのかということを考えるべきである。

長くなったのでこのくらいで本日は止めておきます。

授業への導入については、また今度……。

*1:しかしながら、文部科学省委託調査「教育の情報化に関する取組・意向等の実態調査」((株)富士通総研,平成 28 年3月)によると、「想定できない様々なトラブルが発
生する懸念がある」と約6割の教育委員会関係者が「個人所有のICT端末を持参し授業で利用する取組」について否定的な回答をしていることからも分かるように、基本的に「教育関係者」は「トラブルがあるならそもそも使わせない」という対応を取る傾向にあるんだなぁと感じさせられる結果もある。この意味では、昨日の記事で紹介した東京都が「個人端末」を推奨するというのはかなり画期的。

*2:説明が面倒になったのである。

*3:「2020年代に向けた教育の情報化に関する懇談会」の資料の中でも「これまで行われてきた教育がより効果的・効率的に実施されるという側面だけでなく,探究的な学習の中で,学習者が日常的にICTを活用することにより,より深い学びにつなげるという視点が重要である。」(P.9)と述べられているように、従来型の授業の補助のためだけにICTを使っているのでは、得られるものは少ないだろうと感じる。

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