ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

未来のマナビフェスレポート④ リフレクションセッション編

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レポートも残すところ今回を含めてあと2回です。

今回は、リフレクションセッションの内容です。これは4会場に分かれてのセッションなので、一人で全部に参加することが出来ません。ちなみにプログラムは

  • 【トランジション】溝上慎一(京都大学教授)
  • 【アクティブラーニング】森 朋子(関西大学教授)
  • 【キャリア教育】児美川孝一郎(法政大学教授)
  • 【評価・カリキュラム】松下佳代(京都大学教授)

と…ちょっとこの方向で勉強している人ならお馴染みの先生方のセッションです。非常に豪華なメンバーなので一つだけ選べというのがなかなか酷だなぁと思うわけです。

今回は溝上慎一先生のセッションに参加してきたので、その内容を紹介します。

www.s-locarno.com

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生徒学生を学び育てるトランジション方略 「変わらない」から「変える」へ

本当は二日間の総まとめとして用意しているセッションなので、一日では不完全燃焼な感じはあるものの、一日の総まとめとしてグループで意見交流したりフロアの質問に答えていただいたりしながら、理解を深めていきました。

なお、このセッションの話は以下の内容に近いので、併せて読んでいただけると理解が深まると思われます。

smizok.net

質問への応答から

そもそも小中高、どのくらい接続されていると感じるか

高校大学は比較的繋がる方向に。私学中高一貫は話が通じている。一番話が通っていないのが小学校の段階である。

大学四年間であまり学生が変容していないことが結果として出てきているので、高校へと降りている段階。

高大接続の本質―「学校と社会をつなぐ調査」から見えてきた課題 (どんな高校生が大学、社会で成長するのか2)

高大接続の本質―「学校と社会をつなぐ調査」から見えてきた課題 (どんな高校生が大学、社会で成長するのか2)

  • 作者: 溝上慎一,京都大学高等教育研究開発推進センター,河合塾
  • 出版社/メーカー: 学事出版
  • 発売日: 2018/02/21
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大学生白書2018 ーいまの大学教育では学生を変えられないー

大学生白書2018 ーいまの大学教育では学生を変えられないー

 

高校の段階でも初期値が大きいと現場はいうので、下に降りていかなければいけない段階。

高校は入試のこともあるので、だいぶ学校の先のことを考える雰囲気は見えてきたが、小中は先へのリレーを考えるのは難しい。

最近は、小学校によく呼ばれるが、どのように授業をすればよいかということを教えられる立場にはないので授業そのものの工夫は先生方に頑張って欲しい。今は、中学校、高校でどのように児童生徒が育っているのかを見せることをしている。

言語活動の充実とアクティブラーニングはよく似ている。

→外化(アウトプット)(=学習の社会化)の態度・能力(=(習得・活用)探究)とその内容

どんな用語だろうと、今の時代に必要なのが「外化」という要素。

書くという事は今までもやってきたが、他者や集団を射程にいれて学び方になっていない。圧倒的な時間数の割合を占める伝統的な教科の授業で、ちゃんと他者と上手くやる練習ということが足りていない。

大学に入ってからは変わりにくいものの、それでもまだ変わる余地のあるはずの大学1年生のうちに講義型授業が多すぎて、変化の機会を失っている可能性もある。

三年、四年で演習などが出てきても遅い。講義科目で他者や周囲への関与の機会が必要である。全体の2割、3割でよいので外化する経験が必要

個人の能力を伸ばすことだけではなく、「学習の社会化」が必要である。

今回の改訂は授業の善し悪しだけではなく、「資質・能力」の問題をどうするかが重要である
進路多様校に比べて進学校の生徒はAL型の授業も上手くやるが、決して一生懸命やっているわけではない。どんどん質を追求しないと、全力でやっているわけでもなく、ぜんぜん、資質・能力を伸ばしていることにならない。

生徒がやらないでいるのだから、ALなんてやらないほうがマシという批判に対して。

講義型の授業では真面目にやっているように見える生徒が、ALだとだらけるような例は多くあるが、それは講義型では「聞いている」だけであって分かる形になっていないし、ALのときに見えてくる「協働できない・全力を尽くせない」姿こそ実際に働くときの生徒の姿に近いと思うべき。*1

外化をさせると、その生徒がもっている能力・知識が可視化される。

10年調査でどんな結果になるか示されてきている。

どんな高校生が大学、社会で成長するのか―「学校と社会をつなぐ調査」からわかった伸びる高校生のタイプ

どんな高校生が大学、社会で成長するのか―「学校と社会をつなぐ調査」からわかった伸びる高校生のタイプ

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発達心理学的には17、18でピークを迎える。決まってしまって変わらないとは言わないが、変えようとする態度そのものがかなり固定化されてしまうというデータはある。

中下位層も力は弱いが、進学校も深刻。なぜ自分でもっとつっこんで考えないのかということが問題である。自分でつっこんで、より深く考えていこうとする生徒があまりに少ない。

将来を担えるのかどうかということを観点にして、できることを増やしていくような指導するべきではないか。

質問:AL型の授業が導入されて大学で楽単志向が増えたと言われるが、どのように考えていけばよいか。

楽単志向について

アクティブラーニング以降増えたと言われている。活動偏重になってしまって、学びがない、楽に単位が出るようなものになっている。何を考えたか、何を行ったかという学びの質が重要であって活動そのものが重要なのではない。教員側の責任が重い。

内発的動機付けと自己決定理論

外から与えられながらも、自分が目標につなげたり、自己につなげたりするすることが重要。学習方略や自己調整に育てていくことが重要。内発的だろうと外発的だろうと、外化されてきたものをきちんとフィードバックすることが重要。話せばわかることは多いのだから、きちんと外化させて見取っていくことが重要。

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授業がよくなって子どもたちが前向きに取り組むようになったにも関わらず、授業の内容が次々と抜けていく。先生に言われたことや分かったことが血肉としても伸びていかないというのが現状である。人口減少の社会の中で上位層だって減っている。日本は従来のやり方では、中下位層をのばしきれていないことをもっと真剣に向き合わなければならない。

学校教育は仕事に限らず、社会的役割を果たす大人に育てること。今まで成り立っていたものが成り立たなくなってきたのが、現代であるのでトランジションについて考えていかなければならない。

アクティブラーニングはグループワークではないが、今までの要素に付け加えなければいけないものは「協働」の力である。個人の能力が高いだけでは、社会(=仕事に限らず、の中では通用しなくなっている部分がある
協働という能力を教えることは賛否はあるが、教えるチャンスは合った方がいい。上手く周りとコミュニケーションを取れないことをちゃんと指摘して、できることを試行させるべきではないか。それはプロジェクト学習では無理であり、学校の時間の多くを占める教科の時間でやらなければいけないのではないかと思う。出来ていないものを出来ないと言えるのは、高校が最後の段階ではないのか。

キャリア意識

勉強が出来るからといってキャリア意識があるわけではないが、キャリア意識がある生徒学生は伸びていく。色々なデータをとっても、キャリア意識の強い生徒が最終的によく伸びる。キャリア意識の高い生徒は授業の取り方も変わる。

キャリア意識が高校在学中の結果につなげることは難しいが、大学に入ってからわかりやすく成果が出ている。大学一年生までに将来のことをきちんと見通していない生徒の半分は最後までキャリア意識が見通せていない。

感想

午前中のオープニングセッションの補足に当たるような内容です。

なぜ、AL型の授業が必要なのかということの背景の説明に当たる部分となります。

非常に重要なことは、「活動することがアクティブラーニングではない」ということを繰り返していることです。この点を読み誤っていると、非常に空疎な「這いずり回る活動主義」になるわけです。

「社会」(これも企業や就職に限ってしまうのは誤りである)との繋がりということを理解し、今必要なことをきちんとやらせようという話である。そのときに、従来の「知識伝達」だけでは不十分であり(不要とは言っていない)、時間をかけて指導するためには教科の時間のなかに「外化」の機会を十分に取りましょうという話である。

しかし、この文章を書いていて()で注を入れてしまっているのは、それだけ多く誤解を聞いているからだよなぁ……。

視野を広く、できないことを少しでも挑戦させてできることを増やすために、受験だとかテストの点数だとかでものを考えることから離れないといけないという割とシンプルな話だと思うのだが……なかなか厳しいものを日々、見ている気がしてならない。

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