新人教員の研究授業の時期です。
私学ということもあって新卒はほとんどいないですが、まだまだ経験が少ない先生がいるので、指導案を書くこともなかなかの重い作業のようです。
指導案をめぐるあれこれ
指導案を自分が書こうという話については過去に何度か書いている。
そんな形で書こうかという話も、実習生指導の時に思いついたことを書いている。
生徒観の書き方がどうしても生徒が無能なような書き方から始まってしまうのが……(笑)。まあ、生徒の成長をストーリーとして語ることは指導案として必要なことであろう。
指導案の書き方自体は、それぞれの大学や実習先、それこそ勤務先によってバラバラであるので、あまり神経質に形式に縛られなくてよいとは思う。
例えば、神奈川県と埼玉県と広島県を比較してみると……
全然、項目も順番も異なりますよね。広島県は「単元を貫く言語活動」という語が残っているし*1だから、自分の置かれている状況に併せて、必要な記述が書ければよいとは思います。
実践的な書き方については、しばしんさんのブログが親切なのでご紹介しておきます。
もう少し、自分で色々と工夫してみたいという時は……一番よいのは教員養成課程の国語科教育の先生に聞いてみることだとは思いますが、なかなかそんな環境もないでしょうから、まずは、しっかりと学習指導要領を読むことから始めればよいかと。
ちなみに、「学習指導案」の構造についての解説としては
のP.222-223に詳しいので参照するとよい。
その中では授業研究などで、以下の項目が含まれていることが紹介されている。
- 単元名
- 単元目標
- 単元の評価基準
- 単元計画(指導と評価の計画)
- 単元設定の理由(学習者観、学習材観、指導観)
- 本時案
それぞれの項目の詳しい内容は実際に本書を確かめていただきたい。個人的にはここで紹介されている項目と順序が一番しっくりとくる。
厄介なのが「評価規準」(ノリジュン・基準モトジュンではない)だが、これは基本的には国立教育政策研究所の資料を参考に考えるとよい。
ノリジュンとモトジュンは……どうでもいいと思っている人も多いけど…違う概念ですよね。詳しくは…お調べください。
高等学校国語科 新科目編成とこれからの授業づくり (シリーズ国語授業づくり)
- 作者: 町田守弘,幸田国広,山下直,高山実佐,浅田孝紀,大滝一登,島田康行,渡邉本樹,日本国語教育学会
- 出版社/メーカー: 東洋館出版社
- 発売日: 2018/08/10
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これは新学習指導要領を把握するための補助として使えるので、必要があれば。
指導案から見えるもの
研究授業……といっても、新人研修としての一環なので、それほど分量や形式ばったものを求めている訳ではない。
しかし、指導案を見ると授業者の授業観が見えてくる。
まず、第一に指導案が構造的に書けないようだと、一貫した授業を組織する力が弱い場合が多い。生徒と学習材と指導のバランスを取りながら、長期的な視点で取り組んでいくには、ちゃんと自分の言葉で単元の見通しを説明できないといけないとは思う。
自分自身がそうやって指導案を思案しながら書くことで、単元をクリアにしていくという作業をしているのでなおさらに、そう思う。
第二に、指導案は自由な形式でよい……とはいったものの、個人的には指導案の項目の順序は気になるのである。これは自分がそうやって躾けられてきたからという理由は大きいが、目標に対して最初に書くべきことは「生徒観」だろうと思うのである。
しっかりと把握した「生徒」の今の実力を理解して、足りていないもの、必要なものを伸ばすために授業を組織するものだという授業観である。
恐ろしいことに「授業はできます!大丈夫です……でも、生徒観が書けません」ということを聞いたりするのだが……。なかなか、それは…どうなのでしょう。
授業を立てるということは、生徒の都合でも授業者の都合でも成り立たず、緊張感のある綱引きなのである。
*1:今は諸般の事情があって使われない方向になっている。