『中高生のための論文入門』をいただいたので読み始めています。
これ良い本ですね。この本に触発されて、中高生の探究学習のために役に立つような本を少し紹介してみようと思います。
大定番・『学びの技』と『論文ワークブック』
探究学習の定番の書籍と言えば、これ。
学びの技 (YOUNG ADULT ACADEMIC SERIES)
- 作者: 後藤芳文,伊藤史織,登本洋子
- 出版社/メーカー: 玉川大学出版部
- 発売日: 2014/11/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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問いの立て方から書籍の集め方、そして実際の執筆まで手厚く方法論を解説してくれている一冊です。生徒にも一人一冊持たせたいし、自分の同僚にも一人一冊持たせたいくらい(笑)。
『中高生の論文入門』が新書なので、そこからさらに一つ一つの技法を詳しく知るために便利な一冊。こちらから入門してももちろんよい。
ライティングのスキルを生徒に教える時に個人的に参考にすることが多いのが以下のワークブック。
「書き言葉」と「話し言葉」は違う。その当然の前提を、普段から現代文を教えていると見落としやすい。「あ……ここからやらないといけないのか」というような見落としを毎回してしまう。
本書は、留学生向け、つまり日本語母語話者ではない学生が一から正しい文章をかけるように工夫されている。だから、ある意味、文章を書くことに慣れていない生徒を指導するときに、どのくらい丁寧に指導するべきかの示唆に富むのである。
例えば、話し言葉を訂正させたり文の種類を考えさせて適切な文末を書かせたり……大人からすると「こんなことも?」と見えるようなことから丁寧に……。
一つ一つのスキルを知るには
研究のスキルという意味だと、大学・大学院生時代にお世話になったのは以下の本。
スタディスキルズ―卒研・卒論から博士論文まで、研究生活サバイバルガイド
- 作者: KathrynL. Allen,伊藤俊洋,黒澤麻美,伊藤佑子,吉田朱美
- 出版社/メーカー: 丸善
- 発売日: 2005/12/01
- メディア: 単行本
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これは完全に大学での研究に寄っているので、高校の探究学習には使えない。でも、教員側がこういう手順で研究を進めていくことを知っていることは重要だと思う。問いを立てたり、どうやって文献を整理したりするのか、そしてどうやって草稿を仕上げていくのか……細かいけど、実際に体験してみないと分からない、「探究」という営みの細々とした面倒さ。経験値が少ないなりに勉強する必要があるかなぁと思う。
なぜかうちの近所の図書館にあったので、紹介しておきます。
まあ、こういうノウハウをまとめたものを勉強しないと探究学習の指導は難しいようなあと思う。
一方で、生徒に分かりやすく「こういう方法があるよ」と示すときに比較的に便利なのが以下の本。割だけであるけどきれいで見やすい。
Amazonリンクからプレビューを見てもらうと分かるが、見開き一ページに、「学びの技法」が図表入りで解説されている。
目次を確認してもらうと分かるが、他の本との違うとしてはスケジュール管理のことや試験のテクニックことなどまでも説明されていることである。最近、生徒の悩みを聞いていると勉強のスケジュールの立て方が分からないという話は多いので、こういう整理をされているものを見せるのもいいのかもなぁと思う。
本格的なPBLを目指すなら
個人的にはプロジェクトベース学習は自分の最も目指すべきことであり、このブログでも何度か紹介しているので以下の記事を読んでいただきたい。
特に、ミネソタニューカントリースクール型のPBLは本当に生徒の自由で、なおかつ学力保障を目指せるものであるので、どうにか関わってみたいと思い続けている。
プロジェクト・ベース学習で育つ子どもたち―日米18人の学びの履歴
- 作者: 上杉賢士,市川洋子
- 出版社/メーカー: 学事出版
- 発売日: 2005/07
- メディア: 単行本
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情報時代の学校をデザインする: 学習者中心の教育に変える6つのアイデア
- 作者: C.M.ライゲルース,J.R.カノップ,Charles M. Reigeluth,Jennifer R. Karnopp,稲垣忠,中嶌康二,野田啓子,細井洋実,林向達
- 出版社/メーカー: 北大路書房
- 発売日: 2018/02/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ここまで大転換するに、あとどれだけ掛かるかなぁ……。やれることをやりたい。
探究するのは誰か
探究学習で探究するのは生徒だけだろうか。探究しなさいといって勝手にやれるのであれば、学校で探究なんて枠を用意して縛ること自体がナンセンスだ。
授業として探究を求めるのであれば、そこには生徒のことを伸ばすだけの何かが教員の専門性として発揮されなければならないだろう。生徒に任せる、委ねることは丸投げではない。
そして、生徒の学力や日常の幼稚さを理由に探究を取り上げることも身勝手な大人の言い分であると批判しておきたい。
もちろん高度で抽象的なことは難しいかもしれないが、それぞれの領分で目一杯の背伸びをする気持ちを持つ可能性があることを、大人が否定してはダメだろうと思っている。
子どもの精一杯の背伸びに気づき、それを適切に支援するためには、教員自身が「どう学ぶべきか」を豊富に知っている必要はあるだろう。
探究の道のりはかくも険しい……。