ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

キャリア教育を考えるための参考文献

昨日のキャリア教育の話は、少し思い付きで話している部分が大きいので、興味がある人に向けて、比較的、手に取りやすい資料を紹介しておこう。

 とりあえず、文科省は見ておいて損はない?

困ったら、とりあえず、文科省のサイトを見ると悪くはない。

「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(答申):文部科学省

細々とする話は上記のリンクを見てもらえればわかるが、「キャリア教育」と「職業教育」の概念は分けている。

  • 「キャリア教育」とは、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」である。キャリア教育は、特定の活動や指導方法に限定されるものではなく、様々な教育活動を通して実践されるものであり、一人一人の発達や社会人・職業人としての自立を促す視点から、学校教育を構成していくための理念と方向性を示すものである。
  • 「職業教育」とは、「一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度を育てる教育」である。(後略)
    (下線は筆者による)

 

ようするに、昨日、問題としたような「職業中心型」のキャリア教育は、文科省の答申の上では、全面的に肯定されるものではない。

書いている内容が具体的な実践にすぐつながるようなことを言っているわけではない(むしろ、具体的に書くわけがない)ので、まあ、この文面だけを渡されてもどうにも困るというのもよくわかる。

その一方で、やらなければならないことは言われるのだから、目に見えてやりやすいことをやることになるのも仕方ない。

 

なお、上の答申では、「社会構造の変化」や「子どもの気質」についても定量的に分析がなされているので、「アクティブ・ラーニング」を考えるときにも、読んでもいいかも。

 

そもそも、こんな本がありました

公開した後に指摘されたのですが、こんな本がありました。 

キャリア教育のウソ (ちくまプリマー新書)

キャリア教育のウソ (ちくまプリマー新書)

 

 この本の中では、昨日、指摘したような問題は論じられていました。しかも、プロが書いているので、よほど真っ当に…。

いやぁ…タイトルが胡散臭くてつい手に取ることを後回しにしていたのですが、やはり、とりあえずは、本を手に取らないとダメでした。

 

トランジションという観点

昨日、少し触れたのだけど、最近、「アクティブラーニング」をめぐる観点の一つに「トランジション」という考え方がある。学校から社会へと移行すること、つまりは、教育機関を修了して職業に就くことを指した概念であるけど、文科省の答申でも述べられているように、社会構造の変化のためにトランジションが上手くいかなくなってしまっているという現状がある。

乱暴に言うならば、そのための解決案として挙がっているのが、一面では「キャリア教育」であるし、一面では「アクティブラーニング」というパラダイムなのだ。

そのような観点で述べられているのが、次の書籍。 

アクティブラーニングをどう始めるか (アクティブラーニング・シリーズ)

アクティブラーニングをどう始めるか (アクティブラーニング・シリーズ)

 

 第二章に「現代社会とアクティブラーニング」と題して、「トランジション」の観点について、量的なエビデンスに基づて論じています。

ここまでくるとやや読むのが煩雑になってくるので、もう少し、読みやすのを求めるのであれば、次の書籍。 

アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ

アクティブトランジション 働くためのウォーミングアップ

  • 作者: 舘野泰一,中原淳,木村充,浜屋祐子,吉村春美,高崎美佐,田中聡,保田江美
  • 出版社/メーカー: 三省堂
  • 発売日: 2016/04/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 この本の面白いところは、ワークショップ形式の内容と、研究者視点からの論文の両方が一冊に収録されていることである。本当は、論文からしっかりと入った方がいいんだろうけど、それをやる労力や専門性を考えた時に、「研究成果を実践として『鑑賞』してもらい、取り入れてもらう」という発想は、非常に親切だし、実践者にとってはありがたい。

個人的に、理論をすっ飛ばした「実践書」は、親切に見えて「阿漕な商売」に見えることが少なくないだけに、実践と理論の両面を備えているこの本は希少。

 

保護者や分かりやすい理論を求める人へ

今日届いたばかりで、まだきちんと読み切れていないのだけれど、次の本はわかりやすい。 

親なら知っておきたい 学歴の経済学

親なら知っておきたい 学歴の経済学

 

 どこかで聞いたことのあるようなタイトル……ということはさておき、上で紹介した答申やそのほか様々な資料を用いて、キャリアのやり方を論じている。

もちろん、キャリア教育の専門書ではないので、キャリア教育そのものを論じている訳ではないのだけど、「形だけの職業体験」をさせる一方で「大学進学に過剰な期待」をさせることの怖さを数字で淡々と説いているのがポイントである。

とりあえず、本を読もう

色々な人の思惑が絡むだけに、ちゃんと勉強して生徒に接したい。保護者と話したり説明会で受験生と話したりすると、「将来が心配だ」という切実な思いが伝わってくる。

その思いが切実なだけに「わかりやすい」「形に見えやすい」ものに飛びつきやすいし、それを安易に切り売りされることも少なくない。

しっかりと本を読み、「なんちゃって」に騙されないようにしたい。

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