大注目シリーズの完結編です。
シリーズの過去記事
今回で三作目ですが、1巻と2巻については過去にこのブログでも触れています。
第2巻の終わりでは、チラホラと不安要素を抱えながらも、いよいよ未来への希望が見えてきたところで終わっていましたが、さて、今作は…?
誰のための「未来」か
前巻で未来への希望が見えてきたのだが、その希望が簡単には敵わない現実に直面していくのが本巻である。物語としてお約束ではあるのだけど、そのお約束で直面する問題が、「学校あるある」過ぎて心が痛い(笑)。
本書では、プロジェクト学習が話題の中心にある。SDGsとも地域創生とも関連する、まさに今の学校で注目されていることを分かりやすく描かれている。学校がやりがちな「地域におんぶに抱っこになる」というやりかたに陥らないために、少しずつ工夫を積み重ねていく様子が、どこかの学校で本当にやった話のように見えるのである。
第2巻の書評記事に、前田先生にコメントをいただいたのだが、こんなことをおっしゃられていた。
教師、生徒、そして地域の大人達が少しずつ、問題を発見して、それを自分事として捉えて解決のための行動を起こしていったときに、大きな変化が訪れる。そんなエンディングにしたいと思っています。
まさにその予告通りの、「自分たち」でつかんだ大団円だった。学校にはここまでのことが出来る力があるのだ。そういう力強いエールが、メッセージが聞こえてくるような一冊である。
学校で教員をしている人間としては、このエールを受け取って、自分の持ち場で「未来への学び」を実現していくこと、我がこととして色々な人を巻き込んでいくことなのだと思う。
読みどころが多い
本書のよい点は、マンガでありながらも色々な教育に関する理論を端的に紹介している点にある。例えば、コンピテンシーにまつわる議論などが本書では紹介されているが、理論的な説明もできるだけ分かりやすく手短に行われている。いやぁ…このズバッと本質だけを分かりやすい説明は、他の本とは比べものにならない。
この本を読んだだけで、授業を実践しても大外しはしないくらいに、要点をズバッとついている(もちろん、本書を足がかりにして本もちゃんと読みましょう。そういう行動を期待されている本ですよ、本書は)。
他にも、「学校」が(「教員」が、ではなく)変わろうとするときに、ベテランの教員が役割を果たすのかということが描かれていたことの意味は大きいな、と思う。学校を変えるのは個人のスタンドプレーではない。
ICTや総合学習に対する保護者のアレルギー反応も、「あるある」なのでこれもやっぱり心に来るものがある(笑)。
そして、本書の一番の見所は個人的にこの話。
(『まんがで知る未来への学び 3』P.41より*1。)
これまでのシリーズで、教育や学校に対してしなやかで穏やかな態度を崩すことのなかった吉良先生の衝撃的な一言。「教師になんかなるもんじゃない」という言葉は、昨今の教員志望者の数の激減からすれば、口が裂けても言いにくいことの一つだ。
正直なことを言うと、この場面での森炎君(画像左)の態度は割と「イラッ」と来ていました(笑)。プロジェクト学習に生徒を焚きつけているのに、それはないという、割と身近で見たようなことから来る、イライラである(笑)。現場あるある。
それに対する吉良先生の一撃。
この激動の時代に、これから教員になろうというのであれば、この吉良先生の言葉は正面から受け止めて、答えを出さなければいけないだろう。
それが出来れば、こうやってきっと言えるはずだ。「未来への学びは最高に面白いんだ」と。
学校に関わる内外で読んで欲しい
本書は現場の教員が読んでも、学校あるあるで楽しめますし、内容ももちろんこれからの激動の時代に大いにヒントになってくれます。
とはいえ、本書は学校の教員のみならず、ぜひとも学校に関わる、学校のステークホルダーになるような方々に読んで欲しい。
それは例えば教育実習生であるし、例えば保護者である。
ぜひ、多くの人に学校を知って欲しいな。
*1:出典さえ明記すれば一部の引用はOKと本書に書いてあったのでさっそく引用させていただきました