授業で生徒が楽しいと感じることと、実際に力がつく課題であることが上手く合致することは難しい。
オーセンティックな課題を目指して
生徒が真剣に取り組むことが出来る課題の条件については、インストラクショナルデザインの考え方が参考になる。
おそらく、授業をどのように構成しようと考えるときに、分かりやすく参考になるもであるは、ARCSモデルだろう。
「やる気がない学習者だ」とあきらめずに、学習意欲を高めるアイデアを考えるときには、ケラーの提唱するこの4つの側面から考えていくのが便利です。
(『インストラクショナルデザインの道具箱101』P.10より)
本書がARCSモデルから始められることからも分かるとおり、学習者にとって相応しい課題や思わず真剣になってしまう課題を考える時に、このARCSモデルを意識すると便利である。理論自体は比較的、古くからあるものであるけど、シンプルな発想だからこそ授業の組み立てに役立てやすい。
ARCSモデルとは、以下の内容の頭文字を取ったものである。
- Attention(注意)
- Relevance(関連性)
- Confidence(自信)
- Satisfaction(満足)
『インストラクショナルデザインの道具箱101』の中では、それぞれ「A…おもしろそうだな」「R…やりがいがありそうだな」「C…やればできそうだな」「S…やってよかったな」という言葉で表現しているが、この言葉を意識すると使いやすい。
毎回、毎回、こういう観点から授業を考えるとなると、かなり時間を使うことになるし、こういう要求を満たすような素材を探してくることにもかなり手間がかかる。手間がかかるだけに、成功すれば生徒が思わず熱中せずにはいられない、オーセンティックな課題になるのだ。
国語科教育で重視される単元学習は、つまるところはこういう観点を踏まえたオーセンティックな課題によって構成される授業であるが、これが難しい。……とにかく、日々、面白い言語の素材を揃えることに必死になっている自分がいる。
目先の新しさには飽きる
ICTが使えるようになって、授業で使える手札は圧倒的に増え、端末を使って授業をしているときの生徒の様子は、なかなか真剣に見える。
ただ、こうした生徒の熱中する姿は、ご祝儀みたいなもので、おそらく賞味期限は長くて半年、短ければ一ヶ月もすれば飽きられてしまうだろう。というか、下手に使うとどんどんと授業とは関係ない方向に引っ張られてしまう可能性も高いので、ちゃんとどう端末を使うのかという戦略と向き合わなければいけない時期が来る。
マンネリである。
授業を作るということは、ある意味でマンネリとの闘いである。
一回きりのゲストとしての授業と、日々、同じ生徒たちと向き合って、授業を繰り返すのでは、まったく意味が異なるのである。
それこそ学校では授業以外でも延々と生徒と教員は向き合い続けることになるので、授業以外にも様々な要素に影響を受け、一層、マンネリを加速させる部分もあり……。
とはいえ、そうやって生徒の間にどっぷりと浸かることで、生徒の切実な問題意識や日常の実態をくみ取ることが、それを活かした本気で取り組める課題を考えられるのだろうと思う。逆に言えば、その強みを活かせないと、生徒にとっては常に新鮮な印象を与えやすい、学校外の経験に対して授業は非常に劣悪な条件に置かれてしまうのだと考えておきたい。
結論めいたことを言えるほど、自分に何かアイデアがあるわけではない。
しかし、今は自分のアイデアを煮詰めるのによい手がかりが数多く揃っていると思う。
ライゲルースすごい。
とりあえず、どの教科、どの校種にしたって本気で工夫を考えていけば、つまらない授業ばかりにはならないんじゃないかと思うのですよ。