生徒と定期的に面談をして、色々な状況を聞くのも担任の仕事の一環である。
割と仕事としては慎重さが必要な仕事であるのに、暗黙知で方法があまり共有されていないようなので、少し自分のやり方を紹介してみよう。
前提として
生徒面談で生徒の問題すべてを聞き取って、何か問題解決をしたり行動を変えたりするようなことを期待してはいけない。
1回10分程度の面談で生徒の全てを聞き出して理解して効果的なアドバイスをして人間性を変えようなんて無理な話である。
基本的に面談は客観的に今ある状況をテーブルの上に全部並べて、不安や心配事を棚卸しして、次の面談までに実行できることを約束するというのがせいぜいなのである。
基本的に考え方としては1on1ミーティングである。
生徒は部下ではないので別に勉強を業務に見立てて評価する必要は無い。だからこそ、より純粋に話を聞くことに集中できるし、教員が焦って解決策の提案にしどろもどろとする必要は無いのだ。
じっくりと話を聞いて、生徒の状況をしっかりと聞き取ることで、何か問題が起こりそうな気配を肌感覚で捉えるというイメージだ。
具体的な流れ
面談の具体的な流れは以下の通り。
- オープニング
- 生徒の話を聞く
- アクションを決める
- クロージング
特にひねりがある訳ではない。シンプルに基本的な1on1の形を守っている感じである。それぞれの項目を少し解説しよう。
1.オープニング
最初に必ず聞くのが「体調」である。今の学校の仕組みは健康的に学校に登校してくることが大前提であるので、些細な体調の変化であってもちゃんと捉えておく必要がある。
特に「睡眠不足」や「慢性的な疲労」がないかというのは、生徒の受け答えや表情を見て注意しておく。
その上でその日の面談で何を話すかを予め答えてもらったアンケートや生徒との会話の中で決めていく。
予めアンケートを取るのであれば、「学校生活を評価するなら10点中いくつ?」などのように尺度で答えてもらうのがよい感じ。10点満点にならないのであれば、その減点の理由を聞くというところから始めると、どこに力点を置いて話せばよいかを探っていく。
2.生徒の話を聞く
だいたい、生徒との面談で出てくる話は学校生活のことか勉強のことである。
部活動が忙しく生活が回っていないときはどのように生活を整理していくかということになるし、考査の点数や模試の成績が悪ければ勉強をどうしていくかという話になる。
どうしても教員という仕事をしていると「ああしたら良い、こうしたら良い」とか「こういうところを改善しなさい」とか、つい教えるような言動をしがちであるが、教員が言いたいことを言って気持ちよくなっていてもあまり得るものは少ない。
基本的に何か学校生活や勉強に問題点を感じているのであれば、生徒自身も多かれ少なかれ考えていることがある。
その考えていることをしっかりと聞き取りつつ、生徒自身が自分のことをしっかりと見つめて振り返るという手順を取る。
話を聞くときには、言い方が曖昧な点や言いよどむ点についてツッコんで、適切な表現の提案をしたり、生徒自身にしっかりと言い換えさせたりと、生徒自身を適切に表現することに手間をかける。
3.アクションを決める
だいたい一通り、生徒の課題だと感じていることについて話を聞くと「どこに手を入れたいか」ということはだいぶ見えていることが多い。
だからこそ、次から次へと出てくる課題について全てを絨毯爆撃のように対応しようとすると、やることが多すぎて何からやっていいのか分からなくなり、結局、何もやらないで時間ばかりが過ぎていき、面談した意味もなくなる。
せっかくお互いに時間を割いて面談をしたのだから、何かしらの意識変化や行動の変化にチャレンジできるようなきっかけを持って欲しいところ。
そこで、だいたい話が生徒から出尽くした段階で、次のアクションについて生徒と話し合う。
しっかりと生徒の話を聞けている状態であれば、生徒としても何をやりたいかということが割と明確になっているので、その選択を尊重するように、具体的にどのタイミングでどのように進めていくかを言語化して、整理する。
4.クロージング
話した内容を始めから順番に確認し、認識がお互いにズレていないかを確認する。そして、次の節目までに何をするか確認して終了。
勤務校は生徒とメールが出来るので生徒へミーティングの内容をメールにまとめて送信して終了。
記録をしっかりとお互いに共有しておき、認識に齟齬がないことを確認することが重要である。
短くて良いので頻度は上げたい
基本的に学校は忙しい。書籍で推奨されているような30分や1時間も時間をとって生徒と面談を行うことは難しい。
時間としては15分くらいでよいので、しっかりと話を聞くことに重心をおいて情報を収集することが重要である。教員の見えている教室の風景と生徒の見ている風景は全く違う。
そういう認識のズレをきちんと埋めておくことが重要である。
ただ、担任する生徒は40人程度いるので、一人15分だとしても10時間である。高頻度で面談をするのに10時間という時間はけっこうギリギリのラインである。生徒と面談するので生徒の授業中には当然出来ない。放課後に10時間を捻出するのはかなり厳しいですからね…。
それでも高頻度で生徒の話を聞く習慣が生まれると、ずいぶんと学級の見通しが良くなる。
見えている状態で何かを進めるのと、手探りで進めるのでは、自分の安心感もまったく違うのである。