ならずものになろう

少しは教育について話してみたくなりました。書き続けて考え続けてみたい。

ならずものになろう

文法を教えることを考える

久々に休みが重なったので全国大学国語教育学会公開講座に参加できました。なお、休みだけど職場で考査を作りながら参加していたということは特記しておく。

まだ見ていない方はYouTubeからぜひ!

 

youtu.be

文法は面白い?

公開講座の内容についてはYouTubeをご覧いただければ分かるので、ここで内容をくり返さない。この公開講座を受けての自分の考えたことを書こうと思う。

こういう公開講座のようなことで、文法教育が取り上げられること自体が珍しいと感じる。どうしても「読むこと」などの内容に対して文法は添え物のような印象になりやすし、教科書の内容としてもメインにはこない。

一方で文法がメインに来るときは……高校の古典の授業なんだけど、これがすこぶる評判が悪い。教え込みの授業の典型的なものになりやすいし、そもそも必死になって暗記したところで、一体、どんな生徒の「生きて働く」力になるのかが不明確なのだ。結局、受験のための、知識のための知識になっている感が強く、「生きて働く」文法とはなっていない。

もちろん、古典を学ぶときに古典文法を学ぶことで、原典を自力で読めるようになることには、一定の意味があるのは分かるのだが、「文法で何を教えているのか」ということの直接的な答えとしてはやや残念だと感じる。

まあ…そもそも国語科教育の中で文法教育を自分の一番の専門にしようと思う人は相対的な少ないし、仮に専門にしているとしても国語科の授業のカリキュラムの中で文法を取り立てて教えることは少ないので、こういう「残念だ」という気持ちを持つ人はあまり多くない気がするけど(笑)。

話が横道に逸れたが、専門にしている現場の先生はそれほど多くはないのだが、今日の講座でも話題になっているとおり、よくよく考えると「文法」はどの分野にも顔を出すのだ。ただ、そのことと文法の授業で教えることがイマイチしっくりと来ていないのだ。

そのせいかは分からないが、やっぱり生徒にとって文法が面白くないという意見は根強い。何をやっているのか分からない、手応えが分からないというものは、大人がやったって苦痛なのだから、嫌いになる原因もなんとなく分かるところだ。

色々な授業の種はある

こういうツイートが少しバズったとおり、面白い文法の授業には一定の需要はあるのだろうし、その需要に応えるだけの先行事例や研究や資料はあるように思う。

当ブログでも過去にいくつか記事を書いていますしね。

 

www.s-locarno.com

 

www.s-locarno.com

 

自分の興味関心を定めて授業のための教材研究をしていく中で、おそらく文法に関する資料はいくつか手に入れることは難しくないだろうと思う。

ただ、今回の公開講座が「生きて働く」というテーマであることがまた難しさを感じる。

単発の授業や単元で、一つの話題で、楽しく授業をすることは時間をかけて準備すればそれなりに実現可能だと思う。しかし、「生きて働く」というように、ある程度の生徒の成長のスパンを考えながら、長期的な国語の力としての文法を考えると、一体、何を狙って何処に力を入れるべきかということが途端にあやふやになる。

小ネタの羅列ではやっぱりやるべきことのたくさんある国語科の授業として、立ち位置は厳しい。授業時間にも余裕はないですし。

ただ、いわゆる「学校文法」を覚えさせることが文法教育や文法学習だというイメージは早めに払拭できたら良いなぁとは思う。

文法は楽しい!

質疑でも話題になっていましたが、現代の教室は必ずしも日本語を母語とする子どもばかりを教えるとは限らない実情がある。だからこそ、文法の教える内容や教え方についてもどんどんとアップデートされていかなければいけないと感じるし、これだけ子どもたちに必要とされる力が大量に羅列されるようになった世の中において、一体、文法がどのような学びを支えることになるのかということを考えなければいけないなあと感じます。

ただ、そういう大きな理想は持ちつつも、個人的な趣味嗜好をいうのでれば、やっぱり文法のことを考えるのは楽しいのである。

というのも、前述の通り、あらゆる場面に「文法」は関わってくるので、国語の授業の色々な場面で、生徒がアウトプットしてくる「言語活動」そのものが全て分析の対象に見えるし「ああ、こういう原理があるのかも」と気づいて色々な実践を考えられるとかなり気分としては盛り上がる。

個人的には観察と分析、仮説と検証という手続きが、文学などのように色々なものを知らなければ手がかりも得られないで、参加も出来ないというような感じをするものよりも手応えが得やすく、自分で勉強もしやすい感じがする。

だからこそ、色々な思考を生徒に試して欲しいという気持ちもあって、文法教育を上手くやれないかなぁとぼんやりと思うのである。

まだまだある文法の話題

今回の公開講座の趣旨からすれば外れるのですが、文法に関わる話題はまだまだ広くあります。

例えば、自分の専門である「敬語」(待遇表現)については、文法の機能・知識の面もあれば、実際の運用に関する面もあり、色々な面で文法の話題として扱えるものの例だろうと思う。

また、方言についても、学習指導要領の指導事項に挙がっていることもあるし、非常に面白く、重要な題材である。

多様な日本語話者がいることも現代社会ならば、大きな問題として持っておくべき論点の一つであろうと思う。

 

 

他教科、特に英語科との横断的な授業の中で、文法的に現象を見るということも以前から提案がある。

 

 

広く言えばレトリックももちろん文法の話になってくるし……話題は尽きないのに、学校文法の覚え込みのイメージだけでかなり損をしている気はする。

とはいえ、学校文法を役に立たないと一刀両断しているのもやや現実の認識としてはどうかとも思うわけです。辞書を引いたりある程度言語の現象を規則的に説明できたりすることが、小中学生にも理解できるレベルの論理でまとまっているってことはかなりすごいことなわけでして。

文法って面白いですよね。

オマケ

Togetterに石田先生がまとめを作ってくださいました。

togetter.com

必見ですね。

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